現場が動く業務改革
研究メモ|ローカルAIの検証記録です。
完全ローカル処理 ── 規程データは外に出ません

会社の就業規則を、外部に送らずに、その場で答える。

「育休はいつから?」「残業の上限は?」──社員が自分で規程に聞ける。 しかも規程データはこのPCの中だけで処理し、クラウドには一切送らない。 機密文書ほどローカルAIで扱う意味がある、という一点を確かめるための検証です。

この検証で確かめたかったこと

「機密だからクラウドに載せられない」を、ローカルAIで解く

就業規則・賃金規程・育児介護規程──どれも社外に出したくない社内文書です。 だからこそ「便利なAIに聞きたいが、規程を外部に送るのは怖い」で止まりがち。

この検証では、埋め込み(文書のベクトル化)も、回答の生成も、すべてこのPCの中だけで完結させています。 規程データは外部APIにもクラウドにも送信しません。「外に出さずに、その場で答える」が成立するかを確かめました。
STEP 1
規程を読み込む
就業規則ほか各規程を条単位に分割し、ローカルでベクトル化
STEP 2
社員が質問する
近い条文をベクトル検索し、その条文だけを根拠に回答
STEP 3
出典が必ず付く
条文抜粋・章節・最終改定日をセットで提示

この検証環境:埋め込み bge-m3 / 生成 qwen2.5:7b / いずれもローカル(Ollama)で実行。

実際のやり取りを再現

代表8問を、質問→検索→出典→回答の順に再現

下は、この検証で実際に投げた質問と、AIが返した回答・拾った出典条文です。 スクロールに合わせて「質問 → 近い条文を検索 → 出典カード → 根拠付き回答」の順に現れます。

※ 実際の検証記録(78問・架空の就業規則)からの抜粋です。正しく答えられた5問・答えを1つに絞りにくい境界1問・規程に無い範囲外を正しく断った2問を選んでいます。数値・条番号はすべて架空企業「博多陸運株式会社」向けのサンプル設定です。
強くヒット 中程度 弱い(根拠に不十分) 数値=ベクトル類似度
年次有給休暇は、入社してからどのくらいで何日もらえますか?
出典として拾った条文
就業規則 第5章 休暇等 第19条(年次有給休暇)
0.73
就業規則 第5章 休暇等 第20条(時季指定)
0.65
根拠あり 入社日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した従業員に、まず10日付与されます。以降は勤続年数に応じて法定の日数が加算されます。
根拠:就業規則 第5章 第19条(年次有給休暇)/最終改定 2026-04-01
ドライバーの休息期間は、最低どれくらい確保されますか?
出典として拾った条文
時間外・休日労働規程 第4章 ドライバーの特例 第11条(拘束時間・休息期間)
0.75
時間外・休日労働規程 第6章 健康確保措置 第17条(勤務間インターバル)
0.67
根拠あり 継続11時間を基本とし、最低でも9時間を下回らないよう定められています。
根拠:時間外労働・休日労働に関する規程 第4章 第11条(拘束時間・休息期間)/最終改定 2026-04-01
出生時育児休業(産後パパ育休)は何週間取れて、分割できますか?
出典として拾った条文
育児・介護休業規程 第2章 育児休業 第8条(出生時育児休業/産後パパ育休)
0.78
育児・介護休業規程 第2章 育児休業 第10条(育児休業の分割取得)
0.69
根拠あり 子の出生後8週間以内に、4週間(28日)を限度として取得できます。この休業は2回まで分割して取得できます。
根拠:育児・介護休業等に関する規程 第2章 第8条・第10条/最終改定 2026-04-01
深夜労働の割増率は何%ですか?どの規程に書いてありますか?
出典として拾った条文(複数規程にまたがる)
時間外・休日労働規程 第5章 第14条(割増率)
0.67
賃金規程 第4章 割増賃金 第10条(割増賃金の計算)
0.61
就業規則 第6章 賃金 第26条(割増賃金)
0.59
根拠あり 深夜労働は、通常賃金の25%増しで支払われます。複数の規程に関連記載がありますが、金額計算の最も直接的な根拠は賃金規程です。
根拠:賃金規程 第4章 第10条(割増賃金の計算)/最終改定 2026-04-01
60歳になりますが65歳まで働きたいです。可能ですか?労働条件は今のままですか?
出典として拾った条文
就業規則 第7章 退職、解雇及び定年 第32条(定年等)
0.62
根拠あり 定年は満60歳ですが、希望者は満65歳まで継続雇用されるため、働くことは可能です。ただし継続雇用後の労働条件は都度会社が定めるため、現在の条件がそのまま続くとは限りません。詳細は総務部へご確認ください。
根拠:就業規則 第7章 第32条(定年等)/最終改定 2026-04-01
割増賃金の率は、就業規則に書いてありますか?
出典として拾った条文(スコアが僅差=どれを主根拠にするかが難所)
時間外・休日労働規程 第5章 第14条(割増率)
0.70
就業規則 第6章 賃金 第26条(割増賃金)
0.68
賃金規程 第4章 割増賃金 第10条(割増賃金の計算)
0.68
境界 就業規則には具体的な率は無く「労基法に定める率以上を支払う」とだけ書かれています。実際の率は賃金規程 第4章 第10条に定義されているため、そちらを案内します。
スコアが3件とも僅差の質問。就業規則の抽象的な委任規定を見抜き、率が実際に書かれた賃金規程へ誘導できるかが分かれ目。根拠:賃金規程 第4章 第10条/最終改定 2026-04-01
退職金はいくらもらえますか?
出典として拾った条文
賃金規程 第3章 諸手当 第6条(役職手当)
0.57
就業規則 第7章 第32条(定年等)
0.57
▸ どれも「退職金」を定めた条文ではない=根拠として十分な条文なし
範囲外 → 正しく拒否 提供された規程文書には、退職金に関する記載がありません。正確な金額は分かりません。お手数ですが総務部(人事・労務担当)へご確認ください。
根拠:なし(規程に定めがないため、推測で埋めずに回答を控えた)
副業・兼業は許可されていますか?申請は必要ですか?
出典として拾った条文
時間外・休日労働規程 第2章 第5条(事前申請・承認)
0.52
育児・介護休業規程 第5章 第19条(深夜業の制限)
0.51
▸ どれも「副業・兼業」を定めた条文ではない=根拠として十分な条文なし
範囲外 → 正しく拒否 現在の規程文書の中には、副業・兼業に関する記述がありません。正確な情報は分かりません。お手数ですが総務部(人事・労務担当)へご確認ください。
根拠:なし(規程に定めがないため、それらしい作り話を返さずに回答を控えた)

この8問を含む78問の検証結果:範囲内65問は関連条文の取得率100%(うち1位ヒット97%)、範囲外12問は全件を正しく「分かりません」で返しました。

実際の画面 ①

質問すると、根拠付きで返ってくる

「育休はいつから取れる?」と聞くと、結論を先に述べ、そのあとに どの規程の・第何条・いつ改定されたものかを必ず添えて回答します。 「AIが何となく言った」ではなく「規程のここに書いてある」まで示すのが狙いです。

質問への回答画面(根拠付き)
実画面質問への回答と、根拠(条文抜粋・章節・最終改定日)、ヒットした規程の一覧。ローカルAIによる実際の出力を撮影したものです。
実際の画面 ②

「裏側」──どの条文を拾ったかを開いて見せる

AIの回答をそのまま信じるのではなく、回答の根拠にした条文を人が確認できるようにしています。 ベクトル検索で拾った上位チャンクを、類似度と抜粋つきで一覧表示。 「なぜこの答えになったのか」をたどれる状態にしておくのが、業務で使えるかどうかの分かれ目だと考えています。

裏側パネル(拾った条文の一覧)
実画面「裏側を見る」を開いた状態。どの規程のどの条を、どのくらいの類似度で拾ったかが並ぶ。回答の当てずっぽうを排除するための確認レイヤー。
実際の画面 ③

規程に無いことは、無理に答えず「分かりません」と返す

「社員食堂のランチメニューは?」のように規程に書かれていない質問には、 それらしい作り話を返さず、はっきり「分かりません。総務部へご確認ください」と答えます。 答えられる範囲を守ること自体が、機密文書を扱うAIの信頼性だと考えています。

規程に無い質問を断る画面(棄却)
実画面規程に根拠が無いと判断し、推測で埋めずに回答を控えた状態。根拠欄も「なし」。
この型の派生

同じ仕組みは、社内の別の文書にもそのまま使える

「機密の文書を、外に出さずに、根拠付きで引く」という型は、就業規則に限りません。 社内に眠っている検索しづらい文書ほど効きます。

たとえば、こういう派生

過去の見積を条件で引く「見積検索」、手順書・マニュアルを現場から引く「手順書検索」── いずれも同じ「ローカルで持つ・根拠付きで返す・無ければ答えない」の型で組めます。

使用データについて:本デモの規程はすべて架空(フィクション)です。 厚生労働省「モデル就業規則」の標準的な章立て・条文構造に倣って作成した、架空企業「博多陸運株式会社」(実在しません)向けのサンプルデータを使用しています。 実在企業の規程・実データは一切含みません。金額・日数などの数値もすべて説明用の架空設定です。
※ 本ページは、ローカルAIの活用可能性を確かめるための研究・検証の記録です。 掲載した画面はいずれも実際に動作させて撮影した実画面ですが、扱っている規程データは上記のとおり架空のものです。 実運用にあたっては、社会保険労務士等の専門家による自社向けカスタマイズ・法令適合性チェックが前提になります。