現場が動く業務改革
物語で見る業務改革

ある物流会社の90日

診断90分から、現場が動きだすまで。1社の90日を、場面ごとに追いました。

※ ここに登場する「この会社(従業員20名・物流)」は架空の会社です。就業規則RAGなどのデモと同じ架空の会社で、実在の企業・人物とは関係ありません。物流の中小企業でよくある場面をもとに構成しています。
BEFORE ── 改革の前

「うちは、人がいないと止まる会社だった」

この会社は、社長と事務2名、ドライバーが十数名。よくある地場の運送会社です。数字の上では回っている。ただ、社長の頭のどこかにいつも不安がありました。

場面①:配車のベテランが休むと、朝が止まる

どの荷物を誰に振るかは、勤続15年の配車担当の頭の中にしかない。彼が体調を崩して休んだ朝、代わりに入った人が段取りできず、出発が1時間遅れた。「あいつが辞めたらどうなるんだ」と社長は思う。

運行の記録が手元のデータになっていない会社は、この規模ではまだ多数です。国土交通省の調査では、保有車両9両以下の運送事業者のデジタコ(デジタル式運行記録計)装着率は41.3%。30両以上の84.0%と比べて、規模が小さいほど装着率が下がります。(出典:国土交通省「デジタコに係るフォローアップ調査」2025年度調査・回答2,363者/71,927車両)

ドライバーに運転以外の事務をどこまでさせるかは、記事「ドライバー 人手不足|運転以外の仕事と業務改革」に書きました。

場面②:請求の締めに、毎月まる3日

運賃表・付帯作業・待機時間がバラバラの記録から拾い集めて、事務が手で請求書を作る。月末はそれだけで3日つぶれる。打ち間違いが見つかると、また最初から。

積み下ろしの対価を請求に乗せる話は「荷役料とは|トラック運送の相場と国が示した金額」に、荷主との取引ルールが2026年1月に変わった話は「取適法 運送|下請法改正で運送の取引はこう変わった」に書きました。

場面③:社長が、夜中に電卓を叩く

今月いくら残ったのか、どの取引先が儲かっているのか。数字は社長の勘の中にある。だから確かめたい夜は、自分で伝票をめくって集計する。気づけば深夜1時。

どれも「その人がいるから回っている」状態です。裏を返せば、その人が抜けたら止まる会社だということです。

STEP 0 ── 診断90分

まず、90分で「今」を測る

最初にやるのは、ツール選びではなく現状の測定です。いま何にどれだけ時間がかかっているかを数えておかないと、90日後に何が良くなったのかを言えません。90分の診断で、次の3つをその場で紙に出します。

ここで出した数字が、90日後に「本当に変わったのか」を確かめる基準になります。

仕事を「判断・手順・単純入力」に分ける手順そのものは、記事「業務分解とは|人手不足の中小企業が採用の前にやる4ステップ」に書きました。

STEP 1〜4 ── 90日で起きること

棚卸し → 分解 → ツール → 運用

診断のあとの90日は、4つの段階に分かれます。棚卸し(何にどれだけ時間がかかっているかを書き出す)、分解(一つの業務を判断・手順・単純入力に割る)、ツール(手順と単純入力の部分に道具を当てる)、運用(現場が使い続けられる形にする)。各段階には、実際の画面を触って確かめられる研究デモを挿絵として置いています。

第1〜3週|棚卸し

「なんとなく忙しい」を、紙に落とす

診断で書き出した時間と属人マップを、現場ヒアリングで肉付けする。どの業務がどれだけ時間を食い、どこが一人に依存しているかを一枚にまとめる。

挿絵:業務分解マップ → 挿絵:DX診断レポート →
第4〜6週|分解

一つの業務を「判断/手順/単純入力」に割る

配車も請求も、丸ごと一人に任せるから止まる。中身を「人が判断すること・決まった手順・ただの入力」に分けると、システムに載せられる部分と、人が残る部分が見えてくる。

挿絵:業務分解マップ → 挿絵:求人票の分解 →
第7〜10週|ツール

合う道具を、一番安いところから当てる

分解して出てきた「手順・単純入力」の部分に、既製のツールや小さな仕組みを当てる。高いものから勧めない。今の道具でできるなら、それを使う。

たとえば勤怠管理のクラウドは、公表価格で1人あたり月300円台(税抜300円・税込330円、初期費用0円)のものがあります。20名なら月6,600円(税込)です。(出典:各社の料金ページに掲載された公表価格・2026年8月時点)

挿絵:設備台帳ビューワー → 挿絵:LINE WORKS活用マップ →
第11〜13週|運用

入れて終わりにしない。回り続ける形にする

ツールは入れた後が本番。現場が実際に使い続けられるか、規程やルールと矛盾しないかを見ながら整える。ここから月次で伴走に入る。

挿絵:就業規則RAG → 挿絵:車両点検アプリ →
AFTER ── 90日後

手元に、毎月「1枚」が届く

90日たつと、社長の手元には月に1度、こんな1枚が届くようになります。夜中に電卓を叩く代わりに、これを1枚見れば今の会社が分かる。下は見本です。

この会社さま ── 月次レポート(見本)
2○○○年○月分/※これはダミー数字の見本です
3日 → 半日
請求締めの時間
1人 → 2人
配車を回せる人
深夜集計 → 0
社長の手集計
▸ 今月の一番の変化:請求の元データが自動でそろうようになり、締めが3日から半日に。
▸ 属人マップ:配車の手順を紙と画面に出したことで、代わりが1人立てられるようになった。
▸ 来月やること:日報の入力を現場スマホに寄せて、事務の打ち直しをなくす。
※ 数字はすべて説明のためのダミーです。実際の数字は、診断で社長が答えた「今」を出発点に測ります。

大事なのは、この1枚の数字が「診断90分で社長が自分で答えた数字」から動いていることです。見積もった効果ではなく、実際に測った変化だけが並びます。

なぜ、これに投資する価値があるのか

「一人辞める」の本当のコスト

業務改革の効果は、時間が減ることだけではありません。金額として大きいのは、人が辞めたときの出費が下がることです。その金額はこちらから示しません。下の4つを、自社の数字で埋めてみてください。

(a) 採用コスト:求人広告や紹介料。媒体や採用方法で金額は大きく変わるので、直近の実績を自社の帳簿から拾う。
(b) 欠員をしのぐ費用:抜けた穴を、残った社員の残業か外注で埋める。
(c) 教育の期間:入っても1〜2ヶ月は一人前でない。その間は戦力半分。
(d) 上が埋める機会費用:その穴を、時給の高いリーダー・社長がカバーする時間。

この出費を減らす方法は2つあります。順番が大事で、家族経営に近い会社ほど、①から先に効きます。

方法① ── 先にやる

辞めない会社にする

評価・待遇・仕事の任せ方を整える。人事・組織の設計で、そもそも辞める理由を減らす。ここが土台になる。

方法②

辞めても止まらない会社にする

業務をシステムに載せて、一人に依存する状態をなくす。誰かが抜けても、仕事の流れは止まらない設計にする。

人事・組織の側は①だけ、ツール導入の側は②だけを扱いがちです。両方を一つの流れとして設計するのが、この研究の中心です。

この研究をしている人

りゅうた

中小企業の業務改革|人事・労務 × AI × 物流・建設

物流のプライム上場を含む上場企業2社で10年以上、現場の業務改革に携わってきました。担当は主に人事・労務・総務。福岡県在住。いまは、その経験を中小企業(10〜29名の現場)の目線に翻訳する研究をしています。

よくある質問

この流れについて、よく聞かれること

Q. 診断90分では何がわかりますか?

時間の棚卸し(誰が・何に・週何時間)と属人マップ(どこが一人に依存しているか)が、その場で一枚になります。効果の数字はこちらで見積もらず、社長自身が答えた「今」の数字から始めます。

Q. 高いツールを入れることになりませんか?

順番が逆です。先に業務を「判断・手順・単純入力」に分けて、道具を当てるのは後半の2つだけです。今の道具で足りるならそれを使います。勤怠管理のように、1人あたり月300円台(税抜300円・税込330円)の公表価格から始められるものもあります。

Q. いま相談できますか?

いまは研究期間(12月から本格活動)のため、個別のご相談への対応は12月以降になります。現場のお話を聞かせていただくのは、いまも歓迎です。下のフォームからご連絡ください。

お話を聞かせてください・お問い合わせ

お話を聞かせてください

いまは研究期間(12月から本格活動)。12月からの取り組みづくりのために、中小企業の現場の困りごとを伺っています。30分ほど、オンラインか福岡市内(福岡県)で。伺いたいのは、EC運用や採用でいま手間がかかっている仕事のことです。社名や個別の話は、許可なく公開しません。

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