荷役料(荷役費)とは、相場はいくらか——その積み下ろし、タダでやっていないか
荷役料(荷役費とも呼ぶ)とは、貨物を積む・下ろす作業に対する料金で、トラックの運賃とは別のものだ。長いあいだ運賃に含めた「サービス」で済まされてきたが、2024年に改定された国の標準的運賃で、積込料・取卸料は運賃とは別建ての公式な金額として示された。相場を一言でいえば、手積みの大型車で30分あたり約2,260円。この記事では、荷役料の意味と国が示した相場、そして「請求書に1円も乗っていない」現実を、どう変えていくかまでを書く。
請求書の費目に「荷役料」という言葉を見つけて、あるいは荷主から「これは何の料金だ」と聞かれて、この記事にたどり着いた事務・経理の方が多いと思う。まず言葉の意味から、できるだけ短く整理する。
荷役料とは——「運ぶ」とは別の、「積む・下ろす」の対価
荷役(にやく)とは、貨物を積み込んだり取り卸したりする作業のことだ。荷役料は、その作業に対して発生する料金で、トラックを走らせる運賃(距離や時間に応じた対価)とは、はっきり別のものだ。近い言葉に「附帯作業料」「待機時間料」があり、荷役料はこの附帯作業料の代表格にあたる。
ややこしいのは、この「積む・下ろす」が、長く運賃の中に溶け込んで、独立した料金として請求されてこなかったことだ。「運ぶんだから、積み下ろしくらいやってくれるよね」——この空気の中で、ドライバーが手作業で荷を積み下ろしする時間は、多くの場合タダで提供されてきた。それが変わり始めたのが、2024年の標準的運賃の改定だ。
荷役料の相場——国が示した公式の金額(2024年改定)
相場を考えるうえでいちばん確かなよりどころは、国が示した「標準的運賃」だ。これは、トラック運送事業者が法令を守って持続的に事業を続けるために必要な運賃・料金の目安として、国土交通省が示しているもので、2024年(令和6年)3月22日の告示で改定された(令和6年国土交通省告示第209号)。この改定で、運賃そのものが平均約8%引き上げられたのに加え、これまで待機時間料しかなかった附帯の料金に、積込料・取卸料の水準が新しく設けられた。
金額は、車種別・30分ごとで示されている。積込料と取卸料は同額だ。
| 車種 | 積込料・取卸料 (手積み・30分ごと) | 積込料・取卸料 (フォークリフト等使用・30分ごと) |
|---|---|---|
| 小型車(2t) | 2,000円 | 2,080円 |
| 中型車(4t) | 2,100円 | 2,180円 |
| 大型車(10t) | 2,260円 | 2,340円 |
| トレーラー(20t) | 2,650円 | 2,750円 |
あわせて、荷を積み下ろせずに待たされる時間の「待機時間料」も、同じく30分ごとで示されている。30分を超えた場合で、小型車1,680円・中型車1,760円・大型車1,890円・トレーラー2,220円だ。積込料・取卸料や待機時間料の額は、距離制・時間制の運賃本体と違って全国共通で示されている。
注意したいのは、これは「相場そのもの」ではなく「国が示した目安」だという点だ。実際にいくらで請求できるかは、最終的には荷主との取り決めで決まる。ただ、値段の話を切り出すときに、根拠のない言い値ではなく「国の標準的運賃ではこうなっている」と示せることの意味は大きい。荷役料の相場を調べるなら、まずこの公式額を手元に置くのが出発点になる。
それでも、請求書に1円も乗っていない——という現実
金額が示されても、実際に請求できているかは別の話だ。国が令和3年度に行ったトラック輸送の実態調査を見ると、運賃・料金の決定にあたって原価を反映しているかという問いに対し、「運賃」に反映していると答えた事業者が最も多かった一方で、「待機時間料」「積込・取卸料」に反映していると答えた事業者は、運賃に比べて大幅に少なかった。積む・下ろす・待つの手間は、いまだに運賃本体ほど価格に乗っていない、という調査結果だ。
私は昔、物流の現場で、3PLの業者と一緒に仕事をしたことがある。そこで学んだのは、彼らの世界では「荷役いくら、梱包材いくら、伝票貼りいくら」と、一つひとつの作業に値札がついているということだった。当たり前のようだが、これができている会社は多くない。多くの現場では、積み下ろしも、待ち時間も、伝票の作業も、全部まとめて「運賃の中」に沈んでいる。値札がついていないものは、請求のしようがない。
荷役料を、今から請求に乗せるには
「今さら請求できるのか」という不安があると思う。だが、制度の側は追い風になっている。標準的運賃と対になる標準貨物自動車運送約款が2024年6月1日に改正され、積込み・取卸し等の作業が「運送」とは別のサービスとして明確に区分された。契約にない作業を引き受けた場合には、その対価を収受する旨も規定されている。「積み下ろしは運賃に含む」という古い前提そのものが、公式に書き換えられたということだ。
とはいえ、いきなり全荷主に値上げを通告する話ではない。まず必要なのは、「積み下ろしに何分かかっているか」を記録することだ。値札をつける前に、作業が見えていなければ交渉のしようがない。この「作業を工程に分けて、それぞれに時間と値札をつける」考え方は、荷役に限らず事務全体に効く。詳しくは荷待ち・荷役の別料金化とはと、料金の物差しそのものを解説した標準的運賃とはに書いた。
- ドライバーが荷の積み下ろしを手伝っているが、その時間分の料金を請求書に書いていない
- 荷主の都合で待たされた時間があるのに、待機時間料を請求したことがない
- 荷主との契約書・運送引受書に、附帯作業(積込・取卸・待機)の料金項目がない
今からでも間に合う——0円・15分の最初の一歩
期限の感覚だけ、正確に持っておきたい。標準的運賃も約款も、2024年にすでに改定・施行されている。荷役料を請求する根拠は、もう手元にある。さらに、国はトラック運送事業者に「適正な原価を収受する」ことを義務づける法改正(2025年6月公布)も進めていて、この方向は今後さらに強まる。つまり「請求しづらい」から「請求するのが当たり前」へ、潮目が変わりつつある。今から始めても、遅くない。
今日できるのは、これだけだ。
- 直近1ヶ月の運行から、積み下ろしや待機で時間がかかった運行を1件選ぶ。
- 積み下ろし・待機にかかった時間を、30分単位で数える。費用はゼロ、15分で終わる。
- 上の公式額と掛け算して、「本来いくら請求できたか」を1件だけ出してみる。この1件の金額が、社長に見せる最初の材料になる。
社長への渡し方
1件の数字が出たら、事務・経理の一存で荷主に請求を始める話ではない。荷主との関係をどうするかは、社長の判断だからだ。だから最後は、材料を添えて上げるといい。社長にはこう伝えてください——「この積み下ろし、国の標準的運賃だと1回○○円の料金がつく作業です。今の請求書には1円も乗っていません。次の運賃交渉で、料金表に載せられないか相談させてください」。言い値ではなく国の公式額を根拠にできるので、社長も荷主に切り出しやすくなる。取りこぼしていた作業に値札をつけ直す——それが荷役料の話の本題だ。
付帯作業を流れで引き受けてしまうのは、下請け構造のなかで長く続いてきた習慣だ。ただ、積む・下ろす・待つは輸送とは別の作業で、その料金を取らなければ運転手の人件費の原資は出てこない。だから運行の原価は、「運行」と「付帯」を分けて手元に持っておきたい。
よくある質問
- Q. 荷役料とは何ですか?
- A. 荷役料とは、貨物の積込み・取卸しといった作業に対する料金です。トラックで運ぶ運賃とは別に、「運ぶ」以外の作業(積む・下ろす)の手間に対して発生する対価で、附帯作業料の一種です。2024年に改定された国の標準的運賃では、この積込料・取卸料が運賃とは別建ての料金として新しく示されました。
- Q. 荷役料の相場はいくらですか?
- A. 国が示した標準的運賃(2024年改定)では、積込料・取卸料はいずれも30分ごとの料金として車種別に示されています。手積みの場合で小型車(2t)約2,000円〜トレーラー(20t)約2,650円、フォークリフト等を使う場合はそれより高い水準です。これは国が示した目安であり、実際の相場は荷主との取り決めで決まりますが、交渉のよりどころになる公式の数字です。
- Q. 荷役料を今まで請求していませんでした。今から請求できますか?
- A. 始められます。2024年6月に改正された標準貨物自動車運送約款で、積込み・取卸し等の作業が運送とは別のサービスとして明確に位置づけられ、契約にない作業を引き受けた場合は対価を収受する旨が規定されました。まずは直近の運行で、積み下ろしにかかった時間を1件記録し、公式額と照らして「いくら請求できたはずか」を出すところから始めるのが現実的です。
- Q. 荷役料と待機時間料(荷待ち)は何が違いますか?
- A. どちらも運賃とは別に収受する料金ですが、対象が違います。待機時間料は、荷主先で順番を待っている「待っている時間」に対する料金で、国の標準的運賃では車格別に30分ごとの金額が示されています。荷役料(積込料・取卸料)は、実際に貨物を積む・下ろす「作業そのもの」に対する料金です。同じ現場で連続して起きるため一括りにされがちですが、請求上は別の費目として立てます。運送申込書や契約書面でも、待機・荷役・附帯業務はそれぞれ分けて記載することが求められています。
- Q. 荷役料は誰が払うのですか?
- A. 運送を委託した側、つまり荷主(元請から受けている場合は元請)が支払います。2025年4月から、運送契約では荷役・附帯業務・有料道路料金などの対価を書面で明示することが義務づけられました。したがって「誰が払うか」は、契約時に書面で決めておくのが原則です。慣行として運賃に含めてきた場合でも、書面を作り直す段階で費目として分けることができます。
この記事の立場
物流の会社で、主に人事の側から現場を見てきた経験からの整理です。本文の金額(積込料・取卸料・待機時間料)は筆者の推計ではなく、国が示した標準的運賃(2024年改定)の告示内容です。「3PLの現場で、作業ごとに値札がついているのを学んだ」は筆者自身の実体験です。実際にいくら請求できるかは荷主との取り決めで決まるため、公式額はあくまで交渉のよりどころとして使い、まず自社の1件で「かかった時間×公式額」を出すことを勧めます。
出典(国の一次資料)
- 国土交通省・厚生労働省・全日本トラック協会 共同リーフレット「トラック輸送の『標準的運賃』が改定されました」(令和6年3月・待機時間料/積込料・取卸料の金額表を収録)
- 国土交通省「標準的運賃・標準運送約款」制度ページ https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000118.html
- 国土交通省・厚生労働省「トラック輸送状況の実態調査結果(令和3年度・全体版)」https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001490115.pdf
「荷役料っていくらが相場ですか」と聞かれるたび、私はまず国の標準的運賃の表を見せることにしている。相場は誰かの言い値ではなく、国が示した数字から考え始められる。その数字を、いま請求書に乗っていない作業と突き合わせてみる——その記録として、この記事を書いた。