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CLO(物流統括管理者)とは何か——うちにも必要なのか

荷主から「先月の荷待ちが何分だったか、数字で出してほしい」と言われたら、出せるだろうか。これまで電話一本で融通し合ってきたことが、記録として残す形に変わりつつある。きっかけは2026年4月に始まった「CLO」——物流統括管理者という制度だ。名前は聞き慣れないと思う。義務を負うのは大手の荷主で、10〜29名の運送会社に、自社でCLOを置く義務はない。それでも無関係ではいられない。対象になった荷主は、荷待ちや積載率の計画を国に出し、その結果を報告する立場になるからだ。報告するには、測らなければならない。測るのは、荷物を運んでいる側だ。

新しい制度の名前を聞くたびに、「また何か対応しないといけないのか」と身構える。CLO(Chief Logistics Officer・物流統括管理者)も、そういう文脈で耳に入ってきた社長が多いと思う。結論から言えば、この制度そのものが中小の運送会社に義務を課すわけではない。でも「関係ない」で片づけると、半年後に取引先から届く一通の要請で、初めて意味に気づくことになる。順番に見ていく。

CLOとは、何を義務づける制度なのか

CLO(物流統括管理者)は、2024年に成立した改正物流法(流通業務総合効率化法などの改正)で新しく設けられた仕組みだ。国内の荷物は、トンで数えて9割超がトラックで運ばれている。その輸送を成り立たせるために、荷物を出す側の大きな会社に「物流を経営の課題として見る責任者を、役員級で置きなさい」と求めたのがCLOだ。

対象は、年間の貨物取扱量が政令の基準を超える大手の荷主・元請に限られる。全国の荷主のうち上位のごく一部で、中小の運送会社はもちろん、たいていの中小の荷主も対象にはならない。対象になった会社は、CLOを選任したうえで、荷待ちや荷役を減らすための中長期の計画をつくり、国に提出して、その後の取組状況を毎年報告する義務を負う(計画を自社で公表する義務はないが、取組が著しく不十分だと国から勧告を受け、従わなければ公表される)。CLOを選任しないなどの違反には100万円以下の罰金、必要な届出を怠った場合には20万円以下の過料が定められている。施行は2026年4月。つまり、もう動きはじめている。

なぜ、義務のない中小に関係してくるのか

ここが本題だ。義務を負うのは大手の荷主。でも、その荷主は自分たちだけで物流を効率化できない。実際に荷物を運び、積み降ろしをするのは、契約している運送会社——つまり下請けの中小だからだ。荷主が国に出す計画は、必ず現場の運送会社の協力を前提にする。だから計画の中身が、そのまま取引先への要請になって降りてくる。

たとえば、こういう場面が増える。長く付き合ってきた大手の荷主から、一通の連絡が来る。「4月から積み込みは予約制にする。到着時間を守ってほしい」「荷待ちと荷役の時間を、月ごとに記録して出してほしい」。今までは電話一本で融通しあってきた相手が、急に紙とルールで動きはじめる。配車を仕切る番頭さんは戸惑う。「なんで急に」——理由は、その荷主が国に計画を出す側になったからだ。現場には何の説明もないまま、要求だけが先に届く。

怖いのは、この要請が「お願い」の顔をして、実際には選別として働くことだ。予約枠に合わせて動ける会社、待機時間を記録して出せる会社が、これからも仕事を回してもらえる。同じことを頼まれても「うちは紙とベテランの勘でやってるので」としか答えられない会社は、静かに外されていく。値段でも、付き合いの長さでもなく、数字で応えられるかどうかが分かれ目になる。制度の主語は大手でも、選別されるのは中小の側だ。

荷主は、実際に何を始めているのか——国の事例集から

推測で書く必要はない。経済産業省が2026年に「CLO取組事例集」を公表していて、梅の花グループ・サンゲツ・J-オイルミルズ・SUBARU・ダイキン工業・日清食品・日本アクセス・三菱食品・アルペンの9社が、CLOを置いて何をしたかを自分たちの言葉で書いている。そこから、運送会社に関係する部分だけを抜き出す。

①「委託先任せをやめる」と、はっきり書いてある

事例集には、荷主が取るべき手順としてこう書かれている。「委託先任せにすることをやめる。把握できない情報は開示してもらう交渉をする」。つまり、荷主が運送会社にデータの開示を求めていく方針が、国の資料に明記されている。これは「そのうち来るかもしれない」という話ではなく、すでに文章になっているということだ。

② 協力会社に、機器の導入を依頼した実例がある

ある事例では、荷主が自社にAIドライブレコーダーを導入したうえで、協力会社に対しても事例共有と協力依頼を行ったと書かれている。導入検討や取組開始につながった、とも。荷主が自分の会社の中だけで完結させず、外に広げていることが分かる。

③ 荷主は、荷待ちを月次で見ている

ある社のダッシュボードには、「1時間以上の荷待ち発生率」「荷待ち時間の長い拠点」「荷主別の動向」が月次で並ぶ。そして目標として「2027年3月までに1時間以上の待機発生率を0.5%以下に、2029年3月までにはゼロを目指す」と置かれている。運送会社は、測られている側にいる。

④ ただし、一方通行ではない

荷主が自分の側を直した例もある。幹線便をパレット輸送に切り替え、バラ積みで約2時間かかっていた荷役を、30〜40分(レーンによっては20分)まで短縮した事例では、「運送事業者の稼働メリットが高まり、車両確保の安定化も実現」と書かれている。伝票と外装の表示が合わずドライバーが迷っていた件では、従来は顛末書を求めていたのを改め、「物流事業者に探させない・迷わせない」運用へ転換したという記述もある。

つまり、荷主の変化は「要求が増える」だけではない。数字で応えられる会社は、選ばれる側に回れる。

⑤ そして国の資料が「まずはExcelでいい」と言っている

中小にとって一番効くのは、この一文だと思う。ある社は、企業規模の観点から高度なシステム導入が難しいなかで、「まずは可視化から」を合言葉に、Excel等の自社で実行可能な手段で最低限のデータを集め、事実に基づく改善サイクルを回すことに取り組んだ。事例集は「デジタル化が困難でも、まずは可視化から」「企業規模の観点から高度なシステム導入が難しい場合でも、改革は可能である」と書いている。別の箇所では、システムで取れないデータは現場でチェックシートを作り、手書き・Excel・スマホで入力するとも。

高い道具を入れる話ではない。いま記録がないものを、記録に変えるところから始まる。そして——記録が先にあれば、荷主から求められたときに出すだけで済む。制度対応のためにデジタル化するのではなく、デジタル化してあるから制度対応がただで済む、という順番になる。

社長は月曜に何をするか

CLOの条文を読み込む必要はない。中小の社長がやることは、自社が義務の対象かを調べることではなく、発注元がどう変わるかを先回りして掴んでおくことだ。順番はこうだと思う。

  1. 売上の大きい順に、主要な荷主を3社ほど書き出す。そのうち「うちより明らかに規模の大きい会社」に印をつける。CLOの対象になり得るのは、そこだ。
  2. 印をつけた荷主から、この1年で「予約制」「時間の記録」「パレット化」といった話が出ていないかを、営業担当や配車の番頭さんに聞く。すでに前ぶれが来ていることは多い。
  3. いちばん取引の大きい荷主1社について、直近1週間の「荷待ち時間」を実際に測ってみる。数字が1つでもあれば、要請が来たときに「できません」ではなく「今はこうです」から会話を始められる。

測った数字がひどくても、それでいい。今どうなっているかを言葉にできる会社と、聞かれて黙る会社の差が、これから効いてくる。データを出すこと自体は道具でもできる。でも「どの荷主に、何を、どう出すか」を決めるのは、現場と取引を分かっている人にしかできない。そこは外注できない。

どこに相談すればいいか

「うちは対象なのか」「何を求められるのか」と思ったとき、行き先は内容で分かれる。

よくある質問

Q. うち(10〜29名の運送会社)も、CLOを選任しないといけないのか。
A. 直接の義務はありません。CLO(物流統括管理者)の選任義務は、年間の貨物取扱量が政令の基準を超える大手の荷主や元請に限られます。中小の運送会社が自社でCLOを置く必要はない。ただし、対象になった発注元が国に計画を出す立場になるため、その計画に沿った対応を、取引先として求められる形で影響が及びます。まず「自社が義務を負うか」ではなく「主要な発注元が対象になりそうな規模か」を見てください。
Q. 具体的に、うちには何が降りてくるのか。
A. 発注元の荷主は、荷待ち時間の短縮や積み降ろしの効率化を計画として国に示すことになります。その実行のために、下請けの運送会社へ「予約枠に合わせた到着」「パレット単位での荷渡し」「待機・荷役時間の記録の提出」といった協力要請が来ることが想定されます。数字で応えられる会社が選ばれ、応えられない会社が外れていく——取引の選別の入口になります。
Q. 罰則はあるのか。うちが罰せられることはあるのか。
A. 罰則の対象は、義務を負う大手側です。CLOを選任しないなどの違反には100万円以下の罰金、必要な届出を怠った場合は20万円以下の過料が定められています(2026年4月施行)。中小の運送会社がこの罰則を直接受けることはありません。中小にとっての論点は罰則ではなく、荷主の要請に数字で応えられるかという、取引を続けられるかどうかの側にあります。

この記事の立場

新しい制度は、たいてい大手を主語にして発表される。だから中小の現場では「うちには関係ない」で通り過ぎてしまう。でもCLOのような制度の本当の影響は、義務の条文ではなく、発注元が国に出す計画を通して、要請という形で降りてくるところにある。人事として賃金や制度を扱ってきた側から見ると、こういう「上流の変化が下流の選別になる」構造は、これから何度も繰り返される。だから、条文を覚えるより、自社の荷待ち時間を1つ測っておくことを勧めています。

ただし、自社や取引先が義務の対象になるかという個別の判断は、貨物の取扱量や契約の形によって変わります。そこは上の「どこに相談すればいいか」の窓口へ。本記事は個別の判断や手続きの代行を行うものではありません。

出典

※対象となる荷主の規模(取扱量の基準)は政令で定められます。自社の発注元が対象かどうかは、上記ポータルおよび所管窓口でご確認ください。(閲覧・確認日:2026-07-08)

CLOは、うちが何かを取得したり選任したりする制度ではない。発注元の大手が変わる合図だ。合図が鳴ってから慌てる会社と、荷待ち時間を1つ測って待っている会社。半年後に取引先から一通の要請が届いたとき、その差が出る。それだけの話を、この記事では書いた。

()|著者:りゅうた(物流のプライム上場を含む上場企業2社で10年以上、主に人事・労務・総務。福岡で中小企業の業務改革を研究中。)

この記事は「2024年からの法改正」シリーズの一部です(全13本)