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荷待ち・荷役の「別料金化」とは——タダの付帯作業、いつまで続けるのか

荷待ち・荷役の「別料金化」とは、荷物を運ぶ対価と、待つ・積む・降ろすといった作業の対価を、分けて値段をつけることだ。国は標準的運賃と契約書面のルールで、この「運ぶこと」と「作業」の対価分離に舵を切った。国の調査では、荷待ちのある運行の待ち時間は平均1時間34分。しかもその料金を、もらえていない会社のほうが多い——収受できているのは約3〜5割にとどまる。つまり、多くの運送会社は毎日、値段のつく作業をタダで差し出している。

荷物を届けるだけが運送会社の仕事、ということになっている。だが現場を見ると、ドライバーは着いた先で順番を待ち、自分で荷物を積み、降ろし、検品まで手伝って帰ってくる。運転していない時間のほうが長い日も、めずらしくない。その待ち時間や作業に、請求書上の値段がついている会社は、どれだけあるだろうか。

この記事では、「別料金化」という言葉が何を指すのか、国が何を決めたのか、そして10〜29名規模の運送会社が、この「タダの作業」で毎月いくらを捨てている計算になるのかを、公開されている数字と試算で見ていく。

「荷待ち・荷役の別料金化」とは何か

まず言葉を分ける。荷待ちは、荷物の積み降ろしの順番を待っている時間のこと。荷役(にやく)は、積む・降ろす・棚に入れる・仕分けるといった作業そのものを指す。どちらも、トラックが「走っていない」時間だ。

これまでの運賃は、この待ち時間や作業を含めて「一式いくら」で決まっていることが多かった。荷主から見れば、運んでもらう料金の中に、待つのも積むのも全部入っている、という感覚である。別料金化とは、この「一式」を、運ぶ対価(運送の対価)と、作業の対価(荷役・荷待ちなどの付帯作業の対価)に分けて、それぞれに値段をつけようという考え方だ。運んだ分は運賃で、待たせた分・作業させた分は別の料金で、と切り分ける。国が進めているのは、この対価の分離である。

国はいつ、何を決めたのか

この動きは、掛け声だけではない。国は2つの制度で、対価分離を具体的なルールにした。

1つ目は標準的運賃だ。国土交通省は2024年3月22日に新しい標準的運賃を告示し、同年6月1日に施行した(令和6年国土交通省告示第209号)。運賃水準を平均8%引き上げただけでなく、荷役・荷待ちなどの対価を運賃とは別建てで示す「標準的な料金」を新設した。たとえば荷役作業の料金として、中型車・30分あたり機械荷役2,180円、手荷役2,100円といった具体的な目安が示されている。「作業には、このくらいの値段がついていい」という国の物差しができた、ということだ。

2つ目は改正物流効率化法(改正物流法)である。2025年4月1日からの第1段階で、運送契約を結ぶときに荷役・附帯作業・有料道路料金などの対価を書面で明示する義務が始まった。口約束で「一式」にしていた作業の対価を、契約書の上で分けて見えるようにしなさい、というルールだ。あわせて国は、荷待ちと荷役の合計を「1運行あたり2時間以内・1回の受渡しごと1時間以内」に収める判断基準も示している。

※本記事の制度・運賃の説明は一般的な内容です。個別の契約・料金の判断は、所属するトラック協会や専門家に確認してください。

(2026年7月追記)待機時間料は、いくらが目安か

「待った分に値段がついていい」といっても、では具体的にいくらなのか。2024年の標準的運賃の改定(令和6年国土交通省告示第209号)は、荷待ちの待機時間料についても金額の目安を示している。待機が30分を超えた分について、30分ごとに積み上がる目安が、車種ごとに次のように定められた。

車種待機時間料(30分ごと)
小型車(2t)1,680円
中型車(4t)1,760円
大型車(10t)1,890円
トレーラー(20t)2,220円

たとえば中型車なら、30分ごとに1,760円が積み上がっていく(積込料・取卸料と合わせて2時間を超えると、さらに上の単価になる)。これが国の示した「待たせた分の値段」であり、運賃とは別に請求していい料金だ。金額を知らなければ、そもそも請求のしようがない。改定の期日はもう過ぎている——この料金表は2024年6月から動いている。まずは自社の車種の目安を、この告示で確かめておくことだ。(出典:待機時間料の額は令和6年国土交通省告示第209号。制度概要=国土交通省「標準的な運賃・標準運送約款について」、告示の料金表を収録した国土交通省・厚生労働省・全日本トラック協会 共同リーフレット=「トラック輸送の『標準的運賃』が改定されました」)

その「待ち」と「作業」は、平均どのくらいか

国が対価分離に動いた背景には、現場の実態調査がある。国土交通省のトラック輸送状況の実態調査(令和2年度)によると、荷待ちのある運行では、待ち時間が平均1時間34分。荷役を合わせた「荷待ち・荷役」の合計は3時間を超えるとされる。つまり1回の運行のうち約3時間が、運転ではない「待つ・作業する」時間に消えている。

問題は、この時間にお金が払われていないことだ。同じ調査系統の結果では、荷役料金や待機時間料を収受できている事業者は約3〜5割にとどまる。荷役や付帯作業を契約で書面化できている割合も、半分程度にとどまる。さらに、実際に運ぶ側は「荷待ちが発生している」と7割以上が認識しているのに、荷主側は2割程度しかそう認識していない、という食い違いもある。待たされている側にだけ、時間とコストが積み上がっている構図だ。

大手の決算にも、もう表れ始めている

「作業のコスト」が数字に出てくるのは、中小だけの話ではない。上場している大手物流会社の決算資料を読むと、荷待ち・荷役そのものの料金収入が独立して載っているわけではないが、待つ・作業する時間を含む人件費や外注費の増加が、利益を押し下げていることは、はっきり数字で開示され始めている。

たとえば福山通運の有価証券報告書(2025年3月期)は、営業利益が「2024年問題対応や労働環境の改善に向けた人件費・外注費の増加などにより、前期比30億84百万円減少」したと明記している。同社の主力である運送事業の利益率は、2023年3月期の約8%から、2年で2%台まで落ち込んだ。宅配の最大手グループでも、中核の宅配事業が数年前の黒字から直近期には赤字へ転じたことが決算で開示されている。

大手ですら、待ち時間や作業を含む労働コストが利益を削っている。体力のある会社は、それでも数字を公開し、対価をどう取り戻すかを経営課題として書き始めた。「作業にはコストがかかっている」という事実が、決算の表面に出てきた——これが、いまの局面だ。ならば、開示義務も体力もない中小の現場では、そのコストはどこに消えているのか。

10台の会社は、月いくら捨てているか(試算)

ここでは、ドライバー10名・地場配送中心の10〜29名規模の会社を想定して計算する。以下は前提を仮に置いた試算で、荷待ち・荷役の時間だけが国の調査に基づく実データ、時給・コース数・営業日数は仮定である。

荷待ちだけを見ると、1時間34分は約1.57時間。時給2,000円を掛けると1日あたり約3,140円。月20日で1台あたり約6万3千円。荷役を合わせた合計は3時間超とされているので、合計3時間と置けば1日約6,000円、月20日で1台あたり約12万円になる。これが「運賃に含まれてしまっていて、別建てで請求できていない作業の人件費」だ。

対象1台・1ヶ月10台・1年
荷待ちのみ約6万3千円約750万円
荷待ち+荷役約12万円約1,440万円

10台で回している会社なら、荷待ちだけで年に約750万円、荷役まで含めれば1千万円を超える人件費を、値段のつかない作業として毎日差し出している計算になる。パート・正社員1名分の人件費が、待ち時間と積み降ろしに溶けている、と言い換えてもいい。もちろんこれは仮定を積んだ試算であって、自社の実額はコースごとにまるで違う。だからこそ、まず自社の数字で測る意味がある。

順番は「測る→見せる→分ける」

ここで打ち手をいきなり「値上げ交渉」や「別建て請求」に飛ばすと、たいてい通らない。根拠となる自社の数字がないまま料金を切り出すことになるからだ。荷主との交渉は料金表の問題ではなく、長年の取引関係をどう動かすかという組織側の問題であって、ソフトやツールでは片づかない(適応課題)。一方、時間を測って金額に直す作業は、道具に任せられる(技術課題)。

だから順番はこうなる。まず測る(1コースの荷待ち・荷役を記録する)、次に見せる(いくら分をタダにしているかを1枚にする)、最後に分ける(契約書面で対価を明示し、別建てにする交渉に入る)。国の書面交付義務や標準的運賃は、この「分ける」段階で、あなたの主張の後ろ盾になる。順番を逆にすると、後ろ盾を使う前に話が壊れる。

月曜の朝にやること

  1. ドライバー1名の1コースを決め、荷待ち時間と荷役時間を1週間、記録する。紙のメモでも、デジタコの記録からでもいい。「どこで・何分待って・何分作業したか」だけ。
  2. 1週間分を合計し、ドライバーの時給(会社負担込みの概算でよい)を掛ける。それが、その1コースでタダにしている作業の金額だ。
  3. その金額を、いまの運賃と並べて見る。運賃の何割が、実は「待ちと作業」の対価だったのかが見えてくる。

全部きちんと別料金で請求できていたら、この記事は読まなくてよかった会社だと思う。多くの会社は、測った瞬間に「こんなに出していたのか」と黙り込む。

大学の卒業論文で、私は大手宅配会社の利益がどこから生まれているのかを分析した。当時わかったのは、利益は華やかな新サービスよりも、現場の細かな時間の使い方の積み重ねから出ている、ということだった。あれから十数年、現場で当たり前に続いてきた「タダ働き」に、制度がようやく値段をつけ始めた。運ぶ対価と作業の対価を分ける——言葉にすれば当たり前のことが、ここまで来るのにそれだけの時間がかかった。だからこそ、値段のつく時代に、自社の作業を測っていない会社から取り残されていく。

よくある質問

Q. 別料金化といっても、どうせ荷主が払ってくれないのでは。
A. その実感は正しく、国の調査でも、待機時間料や荷役料金を収受できている事業者は約3〜5割にとどまります(もらえていない側が多数派です)。ただ、これまでと状況が違うのは、国が標準的運賃で荷役・荷待ちの対価を金額の目安として示し、契約書面に対価を明示させる義務(2025年4月開始)まで作った点です。払ってもらえるかは交渉次第のままですが、「そもそも作業に値段がある」ことを国の資料で示せる土台ができました。まずは請求しないことより、いくら分をタダにしているかを自社の数字で持つことです。
Q. 長い付き合いの荷主に、今さら料金を分けると角が立たないか。
A. いきなり請求書を分けると角が立ちます。順番は逆で、先に自社の荷待ち・荷役の時間を1〜2週間記録し、事実として何時間・いくら分が運賃に含まれずに発生しているかを可視化するところまでを社内でやります。数字を持ったうえで、値上げでなく「作業分を運賃と分けて見えるようにしたい」という相談の形にすると、取引を壊さずに話を始められます。ここは料金表の問題ではなく、荷主との関係をどう動かすかという組織側の仕事です。
Q. 書面化や別建て請求は、何から手をつければいいのか。
A. 最初の一手は請求ではなく計測です。1コース分の荷待ち時間と荷役時間を1週間、紙のメモでもデジタコの記録でもいいので拾います。次に、その時間にドライバーの人件費を掛けて「いくら分の作業をタダで出しているか」を1枚にします。契約書面への対価明示や別建て請求は、この数字ができてから。順番を逆にすると、根拠のないまま値上げを切り出すことになり、かえって通りにくくなります。

この記事の立場

物流の会社で、主に人事の側から現場を見てきた経験からの整理です。運送業の「タダの付帯作業」は、誰かの怠慢ではなく、長年の商習慣として自然にそうなってきた。悪意はどこにもない。ただ、値段のつく作業を測らないまま出し続けると、利益はいつまでも待ち時間に溶けていきます。だから、料金を上げる交渉より先に、「いくら分をタダにしているか」を自社の数字で測ることを勧めています。

出典

※この会社の金額は、荷待ち・荷役の時間のみ上記の国調査に基づく実データを用い、時給・コース数・営業日数は仮定を置いた試算です。自社の実額はコース・荷主により大きく異なります。(閲覧・確認日:2026-07-10)

運ぶ対価と、待たせ・作業させた対価を分ける。言葉にすれば当たり前のことに、制度がやっと追いついた。あとは、自社の作業に値段がついていることを、数字で測るかどうかだけだ。

この記事は「2024年からの法改正」シリーズの一部です(全13本)