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トラック運送業の許可が、5年ごとの更新制になる——いつから、何を見られるのか

トラック運送業の許可が、これから5年ごとの更新制になる。施行は公布から3年以内、その後さらに2年の経過措置を経て、更新の審査が順に始まる。本番は数年先だが、更新で見られるのは「日ごろ、法令を守って書類を出してきたか」の積み重ねだ。だから、準備は今日から始められる。この記事では、いつから始まるのか・何を見られるのか・今から何をしておくかを、国土交通省の一次資料と、先に同じ更新制が入った貸切バスを手がかりに整理する。

制度改正の話は、条文を追い始めると急に難しくなる。だからここでは、法律用語をなるべく社長の言葉に置き換えて、「うちは、いつまでに、何を用意しておけばいいのか」だけに絞る。まず時期から見ていく。

いつから始まるのか——「もう半分は動いている」

もとになるのは、2025年(令和7年)6月11日に公布された貨物自動車運送事業法などの改正だ(令和7年法律第60号・第61号)。この改正は柱ごとに施行の時期が分かれている。再委託を2回までに制限する努力義務や、白ナンバーへの荷主規制などは、すでに2026年(令和8年)4月1日から施行されている。一方で、5年ごとの許可更新制と、適正な原価の収受義務・労働者の処遇確保義務は、公布から3年以内(2028年6月まで)の施行で、その後さらに2年の経過措置を経て、更新の申請・審査が順に始まる。おおむね5年ほどで一巡する見込みだ。適正原価の基準となる告示は、この収受義務の施行より前に出される想定で、時期はまだ決まっていない(2026年7月に国の有識者検討会が始まった段階だ)。

正直に書いておくと、私はこの時期の分かれ方が飲み込めず、国土交通省の資料を頭から読み直した。整理すると単純で、「下請けと白トラまわりはもう動いている/運賃と許可更新はこれから数年かけて効いてくる」。つまり「まだ先の話」ではなく、「もう半分は始まっている」というのが正確な現在地だ。制度全体の見取り図はトラック新法をわかりやすくにまとめたので、あわせて読んでほしい。

更新で見られるのは何か——法令遵守の積み重ね

改正法は、許可基準に「法令の規定を遵守して事業を遂行することが見込まれること」を新たに加えた。条文そのものはこの一文で、では何を見るのかという中身は、国土交通省の資料が示している。挙げられているのは、輸送の安全確保・社会保険料の納付・適正な原価の収受・労働者の適切な処遇の確保など(資料には「等」とあり、これに限られない)。これらを守っていなければ、更新されない可能性がある。裏を返せば、更新の審査は特別な一発勝負ではなく、日ごろこれらを守って記録を残してきたかの積み重ねを見るものだ、ということになる。

このうち「適正な原価の収受」は、コストを割る安値で仕事を受け続けることに法律の側からブレーキをかける考え方で、その物差しになるのが国の示す標準的運賃だ。中身は標準的運賃とはに詳しく書いた。更新で見られる要件の一つとして、自社の運賃が今どの水準かを一度照らしておく意味は大きい。

先行する貸切バスの更新制が、参考になる

「更新制と言われても、実際どう運用されるのか」がいちばん想像しにくい。ここで手がかりになるのが、トラックより先に同じ5年更新制を導入した貸切バスだ。貸切バスは2017年(平成29年)4月1日から更新制になり、基準を満たさない事業者を更新のタイミングで外す運用がすでに動いている。トラックはその後追いと考えると、枠組みは見通しやすい。

貸切バスの更新制で、実際に何が求められているかを整理すると、次のようになる。

項目貸切バスの更新制での中身
提出する計画・見積り安全投資計画(安全管理体制・車両の取得整備・その他安全確保の3項目)と、事業収支見積書の添付が義務
収支・財務の審査5年間連続で赤字の見込み、人件費や車両整備費が所要の単価を下回る、更新なら直近1期が債務超過かつ直近3期連続赤字——のいずれかに当たると不許可
法令試験更新時も法令試験を再受験。正答率が9割に満たないと更新されない(再試験は1回のみ。安全性評価認定で一ツ星以上なら免除)
原価報告書毎事業年度の経過後100日以内に原価報告書を提出する義務
更新申請時の添付書類(一部)社会保険料納入証明(申請)書等/労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(事業主控・直近1年分)/事業者の中で給与が最も低い運転者の賃金台帳(直近1年分)の添付が求められる

ここで大事なのは、トラックがこれとそっくり同じ書類になる、と決めつけないことだ。トラックの具体的な審査方法・提出書類は、これからの政省令で定まる。ただ、「更新制はおおむねこういう枠組み——財務がもつか、安全に投資しているか、法令を守れているか——で運用される」という参考にはなる。国が何を見ようとしているかの方向は、貸切バスの先例からかなり読み取れる。

今からやる準備チェックリスト

時期も中身も、まだ確定していない部分がある。それでも、今から動けることははっきりしている。どれも派手さはないが、更新の下地はここで決まる。

  1. 毎年の事業報告書・事業実績報告書を、期限内に出す。更新は日ごろの法令遵守の積み重ねを見るものだ。毎年の報告の遅れや抜けは、その積み重ねの欠けとして残る。まず「毎年、期限内に出し切っている」状態を作る。
  2. 基本の書類を、すぐ取り出せる状態にしておく。社会保険の納付の証憑、労働時間・点呼の記録、決算書類。更新で見られる要件の裏づけになる書類ほど、いざ求められてから探し始めると間に合わない。
  3. 最低車両数を割り込まないよう維持する。一般貨物自動車運送事業では、営業所ごとに5両以上が許可の基礎条件だ。車両の入れ替えや減車のときに、うっかりこの下限を割らないよう気を配る。
  4. 資格者証と記録を整えておく。運行管理者・整備管理者の資格者証、ドライバーの免許・適性診断の記録。番号や有効期限が控えられていて、すぐ一覧で出せるだけで、いざというときの手間がまるで違う。
  5. 増える記録事務を、人手だけで抱え込まない。点呼・安全・労働時間といった「守るべき記録」は、法改正でむしろ増える方向にある。増える記録を人手で受け止めようとすると、どこかで破綻する。日報からの転記や集計のような「誰がやっても結果が同じ作業」を先に手放しておけば、更新で本当に効く記録の精度に人手を回せる。何をどう分けて手放すかは業務分解とはに書いた。

ひとつ、私見として書き添えておきたい。この下地づくりでいちばん効くのは、実は「安値で受けすぎないこと」だと思う。日銭を急いで単価の低い仕事を末端で抱え込むと、物理的に時間がなくなり、書類や記録に向き合う余裕から先に消えていく。運送は労働集約の仕事だから、単価を落とした受注ほど人と時間を食う。その結果、監査や法令遵守からじわじわ遠ざかっていく——安く受け続けることと、更新に通る体制づくりは、どこかでぶつかるのだと思う。

期限は決まっている——今からなら間に合う

許可更新制の本番は数年先だ。だが、更新で見られるのは、その数年のあいだに毎年きちんと書類を出し、記録を残してきたかどうかだ。つまり、審査が始まる日から準備を始めても遅い。逆に言えば、時期がはっきりしている今から下地を作れば、十分に間に合う。慌てる必要はないが、後回しにする理由もない。まずは、次の事業報告書を期限内に、抜けなく出すところから始めればいい。その第一歩の記録として、この記事を書いた。動きがあれば、この記事に追記していく。

よくある質問

Q. 運送業の許可更新制は、いつから始まりますか?
A. 2025年(令和7年)6月11日に公布された貨物自動車運送事業法の改正で、トラック運送事業の許可は5年ごとに更新を受けなければ効力を失う仕組みになりました。この許可更新制の施行は公布から3年以内(2028年6月まで)で、その後さらに2年の経過措置を経て、更新の申請・審査が順に始まります。おおむね5年ほどで一巡する見込みです。本番の審査は数年先ですが、更新で見られるのは日ごろの法令遵守の積み重ねなので、準備は今から始められます。
Q. 許可更新では、何を見られるのですか?
A. 改正法では、輸送の安全確保・社会保険料の納付・適正な原価の収受・労働者の適切な処遇の確保といった法令の規定を守っているかが更新の要件になります。守っていない場合は更新されない可能性があります。具体的にどんな書類でどう審査するかは今後の政省令で定まりますが、先に同じ5年更新制を導入した貸切バスでは、安全投資計画や事業収支見積書の提出、法令試験の再受験、赤字や債務超過の審査が行われています。トラックも同じ枠組みが参考になります。
Q. 今から、何を準備しておけばいいですか?
A. 特別なことより、当たり前の書類が期限内にすぐ出る状態を作ることです。毎年の事業報告書・事業実績報告書を期限内に提出する、社会保険の納付や労働時間・点呼の記録、決算書類をすぐ取り出せるように整える、最低車両数を割り込まないよう維持する、運行管理者や整備管理者の資格者証・ドライバーの記録を整えておく——この積み重ねが更新の下地になります。増える記録事務を人手で抱え込まず、減らせる転記から先に手を離しておくのも準備の一つです。

この記事の立場

物流の会社で、主に人事の側から現場を見てきた経験からの整理です。本文の施行時期・許可更新の要件・貸切バスの更新制の中身は、筆者の推測ではなく、国土交通省が公表した一次資料に基づいています。一方で、トラックの具体的な提出書類・審査方法はこれからの政省令で定まる部分が大きく、本文でも「貸切バスと同じ書類になると決めつけない」と明示しました。更新に自社が間に合うかどうかの個別の判断や、申請の手続きは、条文と最新の政省令、必要に応じて専門家への確認が要ります(本記事は申請の代行や個別の助言を行うものではありません)。

出典(国の一次資料)

「更新制になると聞くと、身構えてしまう」という社長は多い。でも、やることの中身は、当たり前の書類を毎年きちんと出し、記録をすぐ取り出せるようにしておく——その積み重ねだ。期限が決まっている今からなら、間に合う。まずは次の1枚から。その手がかりとして、この記事を残しておく。

この記事は「2024年からの法改正」シリーズの一部です(全13本)