面接の記録は誰が残すか:採用管理システムに任せる所と、決めた人が書く1行
この記事は、面接の記録を、すでにある採用管理システム(応募から合否までを1か所で管理する道具。ATSとも呼ぶ)に任せられる所と、合否を決めた人が自分で書くしかない所に分けて書いたものだ。
いま紙とメモで起きていること、採用管理システムが標準でやってくれること、評価シートの作り方、それでも人に残る仕事、自分の試作がどこを埋めたか、の順に書く。最後に、自社で面接の記録を残すときの分け方を表にした。
記録が無いと、あとで誰が困るか
10〜30人の会社の面接は、社長か現場のリーダーが、仕事の合間に1人でやることが多い。話を聞きながらメモを取ると相手の顔を見ていられないので、メモは手帳に数行か、取らないまま終わる。履歴書は紙のファイル、日程はメール、感想は社長の頭の中、と置き場所もばらばらになる。
困るのは、あとからだ。2人目の面接官が同じことを聞き直す。不採用にした人から理由を聞かれても、何を根拠に決めたかが残っていない。入社した人が数か月で辞めたとき、面接で何を確かめて、何を確かめていなかったかを振り返れない。
人事の側から見ると、こういう「残っていない」ものを後から集めるのは骨の折れる仕事だった。だから記録の話は、道具より先に、誰が何を残すかを決めたいと思っている。ただ、置き場所の問題だけなら、いまは既製の道具でかなり片づく。
採用管理システムを使うと、記録の置き場所が応募者ごとに1つになる
採用管理システムの基本は、応募者1人ごとに画面が1つあり、そこに履歴書、選考の段階、面接の日時、メモ、評価がまとまることだ。10〜30人の会社でも使える国内の製品から、面接の記録に関わる機能を公式の説明で拾うと、次のようになる(2026年10月時点)。
| 製品 | 料金(公式) | 面接の記録に関わる機能(公式の説明) |
|---|---|---|
| Airワーク 採用管理 | 基本機能は0円 | 選考状況を14種類のステータスで管理/面接予定日の確認とメモの入力 |
| sonar ATS | 基本プラン月2.2万円〜・初期費用なし | 自社の選考指標に沿った独自の評価シートを作り、システム上で記入/入力が終わると採用担当者に自動で通知 |
| HERP Hire | 公開なし(問い合わせ) | 有料のオプションで、面接の自動書き起こしと要約、評価・申し送り案の作成 |
これで減るのは、メモをどこに置いたか探す手間、2人目の面接官に前の面接の中身を伝える手間、評価の書き忘れを催促する手間だ。録音を文字にする手間まで減らしたいなら、書き起こしの付いた製品か、Web会議の文字起こしを使えばいい。
評価シートは、点数の欄より根拠の欄を大きくする
道具を入れたあとで差がつくのは、評価シートの中身だと思っている。自社で欄を作れる製品なら、点数の欄を増やすより、面接で相手が言った根拠の一言を書く欄を大きくしたほうがいい。
試作では、観点を3つにした。経験・できること、働き方が合うか、長く続けられるか。たとえば架空のドライバーの面接で、応募者が「事故はありません」と言ったら、本人の申告として「経験・できること」の欄に入り、懸念点の欄に「運転記録証明書で確かめる」が入る。固定残業代について2回聞かれたら、「いちばん気にしている点」として残し、「時間数と金額を紙で見せて説明する」を次にやることに書く。
要約は書いた人の解釈が混ざるが、相手が言ったとおりの一言なら、あとで読んだ人が自分で判断できる。録音するなら、最初に「本日は録音させてください。文字に起こして、面接の記録にだけ使います。よろしいですか。」と同意を取り、その返事も記録の1行目に残す。
それでも減らないのは、合否を決めて、理由を1行残すこと
採用管理システムが用意するのは、記録を書く場所と、書き忘れの催促までだ。合否を決めること、その理由を残すことは、道具を入れても人の仕事のまま残る。
面接官が2人いれば、評価は割れる。試作の架空の面接では、「長く続けられるか」で割れた。配車担当は、固定残業代を2回聞いたのを見て、給与への不満で辞めないかが気になる。社長は、荷待ちが短いのが決め手なので続く、と見ている。2人の評価シートが並んでいても、どちらを取るかはシートに書いていない。
だから、評価シートの最後に「決めた人」と「決めた理由(1行)」の欄を置き、ここが空なら結果の連絡をしない、と社内で決めておく。理由の1行だけは、決めた人が書く。点数や順位を道具に出させないのも同じ理由で、落ちた理由を本人に説明できるのは、条件と根拠で決めた場合だけだからだ。
試作で足したのは、理由を書かないと連絡が開かない止め方
自分が作った採用の工程の試作は、採用管理システムの代わりではない。既製の道具が標準では持っていない「決めた人と理由を書かないと、連絡の下書きが開かない」という止め方を、試しに足したものだ。
作ったあと、別の道具に検品させたら、1件目に不具合が出た。ある応募者について決めた記録が残ったまま、まだ誰も決めていない新しい応募者あての下書きが開いていた。決定を応募者ごとに持たせて直したが、記録は「誰について、誰が、何を決めたか」がそろってはじめて記録になる。自分はその「誰について」を落としていた。
自社でやるなら:面接1回ごとの記録を、システムと人で分ける表
| 面接の記録 | システムに任せる | 人が持つ | 月曜に決めること |
|---|---|---|---|
| 置き場所 | 応募者ごとの画面に、メモと評価をまとめる | — | 使う製品を1つ決める(まず無料のものを試す) |
| 評価シート | 観点ごとの欄・入力の催促 | 根拠の一言を書く | 観点を3つに絞る |
| 録音と文字起こし | 書き起こし(付いた製品か、Web会議の機能) | 最初に同意を取る | 同意の一言を決めて面接官に渡す |
| 合否と理由 | — | 決めた人が理由を1行書く | 理由が空なら連絡しない、と決める |
道具が残すのは材料で、決めた人が残すのは理由の1行
面接の記録のうち、置き場所と書き忘れの催促と文字に起こす手間は、いまある採用管理システムで減らせる。残るのは、割れた評価を見て決め、その理由を1行で書くことで、ここは道具を何に替えても人の仕事だ。試作を作ってみて、自分が線を引いたのもそこだった。
よくある質問
- Q. 面接を録音するのに、応募者の同意は要りますか。
- A. 試作では、最初に何に使うかを伝えて同意を取る形にしています。断られたら録音しないで、面接官がメモを取ります。同意の返事も記録に残します。
- Q. 無料の採用管理システムでも、面接の記録は残せますか。
- A. Airワーク 採用管理は基本機能が0円で、面接予定日の確認とメモの入力ができます。自社の観点で評価シートを作りたい場合は、たとえば sonar ATS の基本プラン(月2.2万円〜)に評価シートの機能が入っています。まず無料のもので、メモの置き場所を1つにするところから始められます。
- Q. 面接官が1人しかいない会社でも、意見の割れは記録できますか。
- A. 1人なら割れは出ませんが、決めた理由の1行は残せます。あとで別の人が読んで分かる言葉で書いておくと、次の採用で同じ確認を飛ばさずに済みます。
内部根拠
筆者は上場企業2社で主に人事・労務を担当してきた。本文の会話・観点・不具合は、筆者が2026年10月に作った採用の工程の試作と、その検品記録のもの(会社・応募者・会話はすべて架空)で、出典の[S1]〜[S2]に対応する。採用管理システムの料金と機能は、各社の公式ページ([S3]〜[S5]・2026年10月20日確認)に書かれている範囲だけを載せた。
出典
- [S1] 筆者が作った採用の工程の試作(2026年10月・面接の録音から判定の材料を出す画面と、合否を人が決める画面)。会社・応募者・会話はすべて架空
- [S2] 同じ試作の検品記録(2026年10月1日・別の道具による検品の1件目=決定が別の応募者に残る不具合と直し方・内部記録)
- [S3] リクルート「Airワーク 採用管理」機能一覧(基本機能0円・14種類のステータス・面接予定日の確認とメモの入力)Airワーク 採用管理 機能一覧ページ(2026年10月20日確認)
- [S4] Thinkings「sonar ATS」料金(基本プラン月額2.2万円〜・初期費用なし)と機能(独自の評価シート・入力完了の自動通知)sonar ATS 料金ページ・sonar ATS 機能ページ(2026年10月20日確認)
- [S5] 株式会社HERP プレスリリース(2026年6月23日・採用管理システム「HERP Hire」のオプションの正式提供開始=面接の自動書き起こしと要約、評価・申し送り案の作成)PR TIMES 株式会社HERPの発表(2026年10月20日確認)