現場が動く業務改革
現動パートナー|業務改革ブログ

ドライバーが来ない求人票、来る求人票——何が違うのか

求人を出しても応募が来ないのは、給与が安いからだけではない。多くの場合、足りていないのは情報のほうだ。求人票を「その人にとっての物件情報」だと思って読み直し、1日の流れ・一緒に働く人・去年の休日実数の3つを足す。それだけで、来ていたのに逃していた応募を取りこぼさなくなる。お金は1円もかからない。

「これだけ社員のことを思っているのに、なんで採用できないんだろう」。そう悩む社長の求人票を見せてもらうと、書いてあるのは給与と「なんでもできる人」だけ、ということがよくある。1日の仕事の様子は書いていない。悪気があって薄いわけではなく、むしろ逆で、社員を大事にしている社長ほど、その思いが求人票の一枚に載っていない。思いはある。なのに、伝わっていない。ここに、地味だが大きな穴がある。

なぜ、求人票を出しても応募が来ないのか

まず切り分けたいのは、応募が来ない理由が「そもそも人が来ていない(母集団が薄い)」のか、「来た人が応募まで進まない(情報不足で帰っている)」のか、である。この2つは打ち手がまったく違う。

母集団の薄さは、求人票では動かせない。ドライバーの有効求人倍率は2.5倍前後、建設の躯体工(型枠・とび・鉄筋)にいたっては8倍前後で、全職業(職業計)の1.06倍と比べて桁が違う。1人を何社もで奪い合っている職種は、求人票をどれだけ直しても母数が増えるわけではない。ここは処遇・定着・多様な人材の活用で戦う話になる。一方で、来ていた応募を情報不足で取りこぼしているケースは、書き方で拾える。この記事が扱うのは後者だ。

求人票とは、その人にとっての「物件情報」である

不動産を買うときのことを思い出してほしい。人は、家賃やローンの返済額を考え、立地・築年数・間取り・日当たりを細かく調べる。35年、下手をすれば50年のローンだからだ。

定年まで勤めるつもりの人は、会社を、これと同じ目で見ている。一生に一度の買い物と同じ重さで、条件を並べて調べている。求人票とは、その人にとっての物件情報である。そして、必要な情報を出せない不動産業者から、人は物件を選ばない。家賃だけ書いてあって間取りも築年数も載っていない物件情報を見て「ここに住もう」と決める人はいない。給与と「なんでもできる人」しか書いていない求人票は、それと同じことをしている。求職者はわがままなのではない。ただ、調べたい情報が出ていないだけだ。

来る求人票に足す「内見情報」3点セット

月曜、自社の求人票を一枚、机に出してほしい。それを「求人票」だと思わずに、「不動産の物件情報」だと思って読み直す。これを買う気で・住む気で読めるか。たぶん、内見情報が足りない。足すのは、次の3つだけでいい。

  1. 1日の仕事の流れ。朝何時に来て、昼はどうで、夕方どうなるか。物流なら「点呼→積込→配送→帰庫」を時間つきのタイムラインにする。物件でいう間取りにあたる。
  2. 一緒に働くチームの人数と年齢感。何人の職場で、上は何歳、下は何歳か。応募者にとってのご近所さん情報だ。
  3. 休日の実数。「週休二日」ではなく、去年は年間何日休めたか。ローンの返済額と同じで、数字がないと不安になる。

給与を上げる話ではない。今ある事実を、応募者が調べたい順に並べ直すだけだ。実際、求人票と実態のギャップに関する苦情でいちばん多いのは「賃金に関すること」だが、その手前で、そもそも仕事内容が分からず帰られている応募のほうが、たいてい数として大きい。

自分の求人票を10項目でセルフ診断する

3点セットを足したら、次は抜けがないかを点検する。下の10項目は、応募者の判断材料の順に並べたチェックリストだ。NOが多いほど「応募が来ない求人票」の疑いが強い。

チェック項目直し方の例
仕事内容を読んで「1日の流れ」が浮かぶ点呼→積込→配送のタイムライン化
休日を数字で書いている「休日多め」→年間休日◯日・4週8休
残業・拘束を定量で書いている「少なめ」→月平均◯時間
給与を内訳で分解している基本給+手当+固定残業代の額と時間数
【物流】車種・距離区分・荷役(手積みかフォークか)を明示実車種・実荷役を書く
【建設】日給か月給か・資格支援を具体額で資格取得費◯円支給と実額
抽象ワード(アットホーム等)に根拠の1行「2〜3名体制で質問しやすい」など事実に置換
未経験者に「最初に任せる範囲」「教育体制」最初の30日で教える範囲を1行
「だれに応募してほしいか」を1人に絞る対象を1人のペルソナに絞る
法令NG(性別・年齢限定、固定残業代の不備)が無い令和6年4月の追加3項目を確認(下記)

この10項目を、実際の求人票のビフォーアフターで動かして確かめられるようにしたのが、求人票ビフォーアフターのデモだ。物流と建設の求人票を、上の型で書き直すと何が変わるかを、その場で触って見られる(企業名・数字は架空のサンプル)。

直すときに、法令で外せない2点

求人票を書き直すなら、同時に押さえておきたい決まりが2つある。ここは「盛る/盛らない」以前の、書いていないと違反になる部分だ。

1つ目は、令和6年4月から明示が義務になった3項目。①業務の変更の範囲、②就業場所の変更の範囲、③有期契約の更新に関する事項。求人票を直すということは、この対応も込みになる。

2つ目は、固定残業代の書き方。基本給と区分したうえで「額」と「時間数」を明記する。この区分がないと、固定残業代そのものが無効と扱われ、支払っていたはずの残業代が全額、割増賃金の計算のもとに算入される。未払いを後からさかのぼって請求されるリスクにつながる。「月給◯万円(各種手当込み)」の一行で済ませていないか、まず確認したい。

※賃金・契約に関する個別の判断は、社会保険労務士に確認してください。本記事は一般的な制度の説明です。

盛らないこと——求人票は「定着」とセットで初めて効く

最後に、いちばん大事な注意点を。3点セットも診断も、数字を「会社の実態」に合わせることが前提だ。盛ってはいけない。休日や残業を実際より良く見せて応募を釣っても、入社後のギャップで早期離職になり、振り出しに戻る。

これは感覚論ではない。中途採用で「やっぱり辞める」の最大要因は仕事内容のミスマッチ(24.5%)で、これは入口で盛った反動として起きる。直近3年で半年以内の早期離職があった企業は57%にのぼる。だから求人票は釣り針であって、本体は「辞めない会社づくり」のほうにある。そして辞めても止まらない会社にしておくには、仕事を特定の人の頭の中から出して手順に載せ、採用の前に業務そのものを分解しておく必要がある。この考え方は業務分解とは——採用の前にやる4ステップにまとめた。欠員が出たときに反射的に求人票を出す前の一手として、誰も切らずに人数を減らして回した話もあわせて読んでもらえればと思う。

月曜の朝にやること

  1. 自社の求人票を一枚、机に置く。それを「不動産の物件情報」だと思って読み直す。
  2. 足りない3つ——1日の流れ・チームの年齢感・去年の休日実数——を、今ある事実だけで書き足す。
  3. 固定残業代が「額と時間数」で書けているか、令和6年4月の3項目が入っているかを確認する。

それでも応募が来ないなら、次に疑うのは求人票ではなく、母集団のほうだ。切り分けができていれば、次の一手を間違えずに済む。

よくある質問

Q. 求人票を直せば、応募は増えるのか。
A. 増えることはありますが、それは「来ていたのに逃していた応募」を取りこぼさなくなるという意味です。書き方で母集団そのものは増えません。ドライバーは有効求人倍率が2.5倍前後、建設の躯体工は8倍前後で、そもそも人が薄い職種は求人票をどう直しても採れない。その場合は入口(求人票)ではなく、定着や業務の組み替えで戦うほうが現実的です。まず「情報不足で帰られているだけの応募」を拾い切ることから始めてください。
Q. 給与を上げないと、どうせ来ないのではないか。
A. 給与を上げる前にできることがあります。求職者が最初に落胆する原因は、給与の額より「仕事内容が分からない」ことです。1日の流れ・チームの年齢感・去年の休日実数——この3つは今ある事実を並べ直すだけで、1円もかかりません。それでも母集団が薄い職種は処遇の見直しが要りますが、順番としては、まず情報を出し切ってから額を検討するほうがムダがありません。
Q. 「アットホームな職場」と書くのは、なぜダメなのか。
A. 抽象的な言葉は読み飛ばされ、むしろ不安を増やすからです。求職者は求人票を物件情報として読み、条件を並べて他社と比較します。「アットホーム」には根拠の1行(例:2〜3名体制で質問しやすい、など事実)を添える。あわせて令和6年4月から明示が義務になった「業務の変更の範囲・就業場所の変更の範囲・有期契約の更新に関する事項」の3項目と、固定残業代の「額と時間数」の明記も確認してください。区分がないと固定残業代そのものが無効になり、未払いの遡及リスクが出ます。

この記事の立場

人事として求人と採用を扱う側にいて、薄い求人票を何枚も見てきました。書いた人が手を抜いているのではなく、社員を大事にしている社長ほど、その思いが一枚に載っていない。求人票は物件情報だと捉え直すだけで、今ある事実の並べ方が変わります。金額を動かす前に、まず情報を出し切る——その順番を勧めています。

出典

※有効求人倍率は集計時点により前後します。個別の賃金・契約の判断は社会保険労務士にご確認ください。(閲覧・確認日:2026-07-10。有効求人倍率は2026-10-20に厚生労働省の一次資料で再確認)

求人票を「物件情報」だと思って読み直すだけで、今ある事実の並べ方が変わる。給与を上げる前の、お金のかからない一手として、それだけの話をこの記事では書いた。

この記事は「ドライバーの賃金・採用・評価」シリーズの一部です(全5本)