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福岡の運送会社の求人88件で、手当を数えた

手当の欄が空欄だった求人は36件。他社が何を書いているかを、実数で並べる

求人を出しているのに、応募が来ない。給与は同業と大きく違わないはずで、休みも取らせている。それでも電話が鳴らない。では、同じ画面に並んでいる他社の求人には何が書いてあるのか。それを知りたくて、ハローワークで公開されている福岡県内のドライバー求人を88件、1件ずつ開いて、賃金と手当の欄を書き出した。

結論から書く。88件のうち36件、つまり4割は「定額的に支払われる手当」の欄が空欄だった。残りの6割に載っていたものも、家族手当や無事故手当のような昔ながらの手当ではなく、走った量や積んだ量に応じて増える種類の手当が大半だった。

裏を返せば、手当の欄を埋めるだけで、福岡のドライバー求人の4割より前に出られる。人件費は1円も増えない。この記事では、88件が実際に何を書いていたのかを数字で並べたうえで、自社の求人票の手当欄に何をどう書けばいいかまで書く。

次のどれかに当てはまるなら、この記事は自社の求人票の話だ。

  • 求人は出しているが、この半年の応募が0件か1件で止まっている
  • 賃金欄に「月給◯万円(各種手当含む)」とだけ書いている
  • 無事故手当や皆勤手当は払っているが、求人票に書いたかどうか思い出せない

福岡のドライバー求人88件を、どうやって数えたか

使ったのは、誰でも見られるハローワークインターネットサービスだ。職種を「貨物自動車運転手」、就業場所を福岡、求人区分を一般求人にして検索すると、1,142件が出てくる(2026年8月15日時点)。この先頭から90件分の求人票を順に開いて、賃金の額、基本給、定額的に支払われる手当、通勤手当の4つの欄に書いてある内容を、そのまま書き出した。

90件のうち2件は、集計から外した。就業場所をフリーワードで絞った都合で、社名や住所に「福岡」の文字が入っているだけの他県の求人が混ざったからだ(三重県桑名市には福岡町という地名がある)。この2件を除いた88件が、以下の数字のもとになっている。

数える側の限界も、先に書いておく。

だからこの88件は、福岡の運送業の実態そのものではない。いま福岡でドライバーの仕事を探している人が、画面で実際に見ている88枚だと思って読んでほしい。求職者が比べているのは統計ではなく、目の前に並んだ求人票のほうだからだ。

88件のうち36件は、手当の欄が空欄だった

いちばん数が多かったのは、何も書かれていない求人だった。「定額的に支払われる手当」の欄が空欄(「-」)だった求人が、88件中36件。40.9%、およそ4割である。

1件あたりに書かれていた手当の数を並べると、こうなる。

定額手当の記載求人数(88件中)割合
0種類(空欄)36件40.9%
1種類26件29.5%
2種類13件14.8%
3種類13件14.8%

1件あたりの平均は1.03種類。手当を3つ書いている求人は13件しかないので、3つ書けるだけで、88件のうち上位15%に入るという計算になる。

ここで急いで補足しておきたいのは、この36件が「手当を1円も払っていない会社」だとは限らないことだ。むしろ逆で、無事故手当も皆勤手当も現に払っているのに、求人票の欄には書いていないだけの会社が、この中にかなり混ざっているはずだと私は見ている。理由は欄の名前にある。無事故手当や皆勤手当は月によって出たり出なかったりするので、「定額的に支払われる手当」の欄には書きにくい。書きにくい欄は、そのまま空欄になる。

ただ、その事情は求職者には見えない。空欄は「手当がない会社」として読まれる。求人票の上では、書いていないものは無いのと同じだ。

求人票に載っていた手当のトップ5と、その金額の幅

では、書いてあった6割は何を書いていたのか。88件を通して出現数の多かった順に並べる。金額は、求人票に書かれていた額の下限から上限までの幅だ。

手当の種類88件中出現率書かれていた金額の幅
業績・職能・業務手当21件23.9%5,000円〜195,000円
運行・乗務・積載・距離などの手当17件19.3%10,000円〜166,700円
地域・勤務地手当7件8.0%9,000円〜30,000円
調整手当7件8.0%5,000円〜50,000円
資格・技能・免許手当6件6.8%2,500円〜39,700円

上位2つで4割を超える。どちらも、その人がどれだけ働いたかに紐づく手当だ。生活を支える性質の手当ではなく、稼働に連動する性質の手当が、福岡のドライバー求人の手当欄の主役になっている。

目を引くのは金額の幅のほうだ。業績・職能・業務手当は、下は5,000円から上は195,000円まである。19万5千円の業績手当は、もはや手当というより給与の本体だろう。実際、88件の中には基本給58,600円に積載や距離の手当を積み上げて総額を20万円台にしている求人もあった。基本給だけを見ると実態を見誤るし、逆に総額だけを見ても中身は分からない。

これは求職者の側から見ると、判断のしづらい求人になる。賞与や退職金の算定、それに残業の時間単価が基本給に連動する会社は多く、基本給が5万円台と書いてあれば、総額が同じでも身構える。手当の額が大きい会社ほど、その手当がどういう条件で出るのかを書く必要がある。

参考までに、賃金の水準そのものも書いておく。時給制などを除いた月給の求人75件で、提示レンジの下限の中央値は248,000円、上限の中央値は315,000円だった。自社の求人票の数字が、同じ画面でどのあたりに並ぶのかの目安になる。

無事故手当・家族手当は、88件でそれぞれ2件しかなかった

数えていて、いちばん意外だったのがここだ。運送業といえば無事故手当、という前提で見はじめたのに、88枚めくって2枚しか出てこなかった。

「運送の定番」といわれる手当88件中出現率
無事故手当2件2.3%
家族手当(配偶者・扶養を含む)2件2.3%
住宅手当2件2.3%
食事手当2件2.3%

この結果は、業界全体の統計とも方向が合っている。全日本トラック協会が毎年出している賃金の実態調査(2024年度版)では、男性運転者の変動給の内訳が、歩合給の合計44.9%、時間外手当48.5%、その他6.6%となっている。精皆勤手当・無事故手当・日宿直手当などをまとめた「その他」は、金額にして月9,900円。業界の給与の作りとして見ても、無事故や皆勤の類はすでに小さい部分でしかない。求人票での2.3%という数字は、その現実の反映だと考えると納得がいく。

ここで、この記事の限界をはっきりさせておきたい。全ト協の調査で公開されている抜粋版には、手当ごとに「何%の会社が支給しているか」という表が載っていない。載っているのは固定給と変動給の大きな内訳までだ。つまり公開資料からは、「無事故手当を払っている会社が全体の何%か」という数字は出せない。

だから、この記事が数えたのは支給率ではなく掲載率だ。払っている会社の割合ではなく、求人票に書いている会社の割合を数えている。この2つは違う数字だが、応募するかどうかを決める人が見ているのは掲載率のほうである。求人票に書かれていない手当は、応募の判断材料に一度も入らない。

通勤手当だけは、8割の求人が金額まで書いている

同じ88件の中で、逆にきちんと埋まっていた欄がある。通勤手当だ。金額の記載があったのは72件、81.8%。上限額は月500円から150,000円までばらついていて、中央値は月20,000円だった。

4割が空欄だった定額手当の欄と、8割が金額まで書いている通勤手当の欄。この差は、書く側の熱心さの差ではないと思う。通勤手当には金額を入れる専用の欄があり、そこに何を書けばいいかが決まっている。一方の定額手当の欄は、何を書けばいいかが決まっていないから空欄になる。

つまり、欄が埋まらない原因は「書くことがない」ではなく「何を書くかが決まっていない」ほうにある。ここから先は、その中身を決める話になる。

求人票の手当欄に書く4つのこと

以前、求人票は求職者にとっての物件情報だと思って読み直してみる、という記事を書いた(ドライバーが来ない求人票、来る求人票)。手当の欄も同じで、金額と条件がそろっていないと、読む側は他社と比べようがない。書くのは次の4つでいい。

  1. 手当の名前と、月額を書く。「無事故手当あり」ではなく「無事故手当 月5,000円」。人によって差があるなら「3,000〜10,000円」と幅で書く
  2. 支給の条件を1行添える。「無事故手当 月5,000円(当月に人身・物損の事故がない場合)」。どうすれば出るのかが書かれていない手当は、読む側からは出ない手当と同じに見える
  3. 毎月出る手当と、月によって変わる手当を分ける。定額手当の欄には毎月固定で出るものだけを入れ、走行距離や運行数で変わるものは仕事内容や備考の欄で計算の仕方ごと説明する
  4. 総額のうち手当がいくらかを書く。「月給25万円(各種手当含む)」で止めず、基本給と手当に分ける。同じ25万円でも、内訳の見える求人と見えない求人では読まれ方が違う

書くための材料は、すでに社内にある。直近の給与明細を1人分だけ開けば、実際に払っている手当が名前と金額つきで全部並んでいる。求人票に書けていないのは、払っていないからではなく、明細と求人票が別の場所で別々に管理されているからだ。

そして、払っているのに説明できていないという状態は、社外だけでなく社内でも同じことを起こす。手当の名前と条件を書き出す作業は、いま働いている人に「この5,000円は何の手当か」と聞かれたときの答えを用意する作業でもある(「俺の手当、合ってるのか」——給与が説明できないと、人は辞める)。求人票のための30分が、そのまま社内向けの説明の材料になる。

手当を新しく作ると、残業の時間単価が上がる

ここまで読んで「じゃあ手当を新設しよう」と考えたなら、その前に2つだけ確認してほしい。書くのは無料だが、作るのはお金と計算がついてくるからだ。

1つ目は、残業代への跳ね返りである。手当を新しく作ると、原則としてその分だけ割増賃金の基礎が増え、残業の時間単価が上がる。基礎から除外できるのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つだけで、これは例示ではなく限定列挙だ。しかも名称ではなく中身で判断される。扶養家族の人数に関係なく全員へ一律に支給している家族手当は、名前が家族手当でも除外できない。

最低賃金と比べるときは、手当の一部を外して計算する

2つ目は、最低賃金の判定だ。自社の賃金が最低賃金を満たしているかを見るときは、精皆勤手当・通勤手当・家族手当・割増賃金・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除いて計算する。求人票に手当を並べて総額を大きく見せても、最低賃金の判定はその総額では行われない。手当を厚く組んでいる会社ほど、最低賃金が改定されるたびに、除外後の額で確認しておく必要がある。

だから順番としては、いま払っているものを求人票に書くが先で、新しく作るは後になる。前者は今日できて費用がかからず、効果があったかどうかも応募数ですぐ分かる。後者は、賃金の配分そのものを動かす作業になる。その段階の話は別に書いた。

月曜の朝にやること:自社の求人票の手当欄を開く

  1. いま出している自社の求人票を開いて、「定額的に支払われる手当」の欄だけを見る。空欄なら、88件のうちの36件と同じ側に並んでいる
  2. 直近の給与明細を1人分そろえて、実際に払っている手当を全部書き出す。手当の名前、月額、出る条件を1行ずつ
  3. そのうち毎月固定で出ているものを、求人票の手当欄に金額つきで書き写す。3つ書ければ、88件の中では上位15%に入る

かかるのは30分ほど。増える人件費はゼロだ。

よくある質問

Q. 求人票の手当欄は、空欄のままでもいいのですか?
A. 支給していない手当を書く義務はありません。ただ、福岡県内の運送の求人88件を数えたところ、「定額的に支払われる手当」の欄が空欄だったのは36件、全体の4割でした。求職者は空欄を「手当がない会社」として読みます。実際には無事故手当や皆勤手当を払っているのに、月によって出たり出なかったりするため書きにくく、空欄のままになっている会社がこの中に相当数あるはずです。毎月固定で出している手当を金額つきで2行か3行足すだけで、同じ画面に並ぶ他社との見え方が変わります。書くこと自体に費用はかかりません。
Q. 応募を増やすために、新しく手当を作ったほうがいいですか?
A. いま払っている手当を書き切るのが先です。手当を新しく作ると、原則としてその分だけ残業の時間単価が上がります。割増賃金の基礎から除外できるのは家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つに限定列挙されていて、しかも名称ではなく中身で判断されます。扶養家族の人数に関係なく全員へ一律に支給している家族手当は除外できません。書くだけなら費用はかからず、効果があったかどうかの確認も早く済みます。作るのはその後で間に合います。
Q. 「月給25万円(各種手当含む)」と書くのは、なぜ弱いのですか?
A. 求職者が比べているのが総額だけではないからです。数えた88件には、基本給58,600円に積載や距離の手当を積み上げて総額を20万円台にしている求人がありました。賞与や退職金、残業の時間単価が基本給に連動する会社は多く、内訳が見えないと総額の中身まで判断できません。手当の名前と月額と支給の条件を分けて書いてください。あわせて、最低賃金と比べるときは精皆勤手当・通勤手当・家族手当・割増賃金などを除いて計算するため、手当を足した総額で最低賃金を満たしているとは限らない点も確認が必要です。

この記事の立場

物流の会社で、主に人事の側から賃金と採用を見てきた経験からの調査です。求人票を書く側にも、給与計算をする側にもいたので、手当が求人票に載らない事情は想像がつきます。悪意でも手抜きでもなく、明細と求人票が別々の場所で管理されているだけです。ただ、応募する人にはその事情は見えません。だから、金額を動かす前に「いま払っているものを書き切る」ところから勧めています。

本文の88件の集計は、ハローワークインターネットサービスで公開されている求人票の記載を、2026年8月15日に取得して数えたものです。手当の分類は名前の意味が近いものをまとめた独自の区分で、公式の分類ではありません。母数は検索結果1,142件のうち先頭90件から、他県の求人2件を除いた88件で、県内全体の代表性は保証されません。変動給の内訳は全日本トラック協会「2024年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(本編抜粋)」、割増賃金の基礎と最低賃金の対象になる賃金は厚生労働省の資料で確認しました。本記事は求人票の作成代行や個別の助言を行うものではありません。

本記事の手当・割増賃金・最低賃金の扱いは、一般的な制度の説明です。自社の手当が割増賃金の基礎から除外できるか、最低賃金の比較に算入されるかは、賃金の定め方と実態によって変わります。個別の判断は社会保険労務士、または所轄の労働基準監督署・都道府県労働局にご確認ください。

出典(求人票の実地調査と、国・業界団体の資料)

  • 福岡県内の貨物自動車運転手の求人88件の集計(職種=貨物自動車運転手/就業場所=福岡/一般求人。検索結果1,142件のうち先頭90件を取得し、他県の求人2件を除いた88件。取得日=2026年8月15日)ハローワークインターネットサービス 求人情報検索
  • 全日本トラック協会「2024年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(本編抜粋)」(調査時期=令和6年5・6・7月にきまって支給された給与の1か月平均/第6表 変動給の内訳=男性運転者平均で歩合給計44.9%・時間外手当48.5%・その他6.6%=9,900円)2024年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(PDF)
  • 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「割増賃金の基礎となる賃金とは?」(除外できる7つの限定列挙/「例示ではなく、限定的に列挙されているもの」/家族手当・通勤手当・住宅手当の除外できる例とできない例)割増賃金の基礎となる賃金とは?(PDF)
  • 厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」(比較から除外される賃金=割増賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金・臨時の賃金・精皆勤手当・通勤手当・家族手当)厚生労働省 最低賃金の対象となる賃金
  • 労働基準法37条5項・労働基準法施行規則21条(割増賃金の基礎に算入しない賃金)e-Gov 法令検索 労働基準法

※求人の掲載内容は日々入れ替わるため、同じ検索条件でも時期によって数字は動きます。(取得・確認日:2026-08-15)

88件を数えて分かったのは、他社が特別なことを書いているわけではない、ということだった。4割は手当の欄が空欄で、残りも1つか2つ書いてあるだけ。無事故手当も家族手当も、めったに載っていない。だから、いま払っている手当を金額と条件つきで3行書くだけで、同じ画面の中では目立つ側に回れる。その3行を書くための材料は、先月の給与明細にもう入っている。

|著者:りゅうた(物流のプライム上場を含む上場企業2社で10年以上、主に人事・労務・総務。福岡で中小企業の業務改革を研究中。)
現場の話の続きは、noteでも書いています → りゅうた@中小企業の業務改革