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運送の求人、どこを直せば他社と違って見えるのか

架空の求人票を1枚用意して、賃金・仕事内容・手当の3欄を実際に書き換えてみる

求人票は出している。具体的に書いたほうがいいことも分かっている。それでも自社の求人票を画面で並べて見ると、隣の会社のものとほとんど同じに見える。どこをどう変えれば違って見えるのかが分からない。

結論から書く。変えるのは3つの欄だけでいい。賃金欄、仕事内容欄、手当欄。この3か所をいま社内にある事実で書き直すと、同じ給与のまま印象が変わる。人件費は1円も増えない。かかるのは30分ほどだ。

ここでは架空の運送会社の求人票を1枚こしらえて、その3か所を書き換える。書き換えた文面には毎回「読む側にはこう見える」という判定を添えた。判定の根拠は、私が応募者として求人票を読んでいたときの読み方である。

次のどれかに当てはまるなら、この記事は自社の求人票のことを書いている。

  • 賃金欄が「月給20万円〜45万円」のように10万円以上開いている
  • 仕事内容欄に「その他付随業務」と書いている
  • 手当欄が空欄、または「各種手当あり」で止まっている

応募者は、求人票に書いていないことまで読んでいる

先に立場を書いておく。私は人事にいたので求人票そのものは何枚も見てきたが、採用担当ではないので、面接官として応募者を選ぶ側に立ったことはない。求人票をいちばん真剣に読んだのは、自分が転職しようとしたときだ。ここに書くのは、書く側から見た正解ではなく、読む側にいた人間がどこを見ていたかである。

最初に見たのは、残業時間と休日日数だった。給与ではない。給与は横並びで大差がつかないことが多いが、この2つは会社によってはっきり違う。そのうえで会社のホームページを開き、上場している会社なら有価証券報告書まで見て、書いてあることが互いに矛盾していないかを確かめた。分かったのは、求人票からは思っているよりずっと多くのことが読めるということだ。しかも読めるのは、内容そのものより書き方のほうからである。

社長の側に反転させると、こうなる。応募者は、あなたが書いた一行から、あなたが書かなかったことまで推測している。書かないことは、印象を消す選択ではない。読む側の想像に判断を預ける選択になる。

求人票のどこから会社の中身が読まれるのか:固定残業・繁忙期・事務所の人数

手がかりにしていたものを3つ書く。中小企業には有価証券報告書がないので、応募者が見られるのはホームページと求人票だけだ。その分、求人票の一行あたりの比重は大きい会社より重い。

1. 固定残業の時間数

固定残業が40時間分と書いてある求人は、それだけで「毎月それくらいは働く前提です」という会社の申告として読まれる。実際にそこまで働かない月があっても、読む側には分からない。ドライバーなら改善基準告示の拘束時間と矛盾しない数字かも見られる。

2. 繁忙期についての一行

「繁忙期は書類の仕分けを手伝ってもらうことがあります」。この一行があると、応募者は「この会社には紙の書類がまだ回っている」と読む。逆に「日報はタブレットに入力」なら、紙をやめている会社だと分かる。道具の名前は、そのまま会社の現在地の申告になる。

3. 事務所にいる人の数

これがいちばん強い手がかりだった。規模に対して事務や管理の人数が多いと、私はその会社の仕事が複雑なのだと判断していた。イレギュラーや個別対応が多いから、それをさばく人が要る。逆に人数が絞られていれば、決まった型で回っている。求人票に「ドライバー14名・配車2名・事務2名」と書くだけで、この情報は伝わる。隠しても、応募者は別の場所から推測している。

これから直す求人票(架空の運送会社・書き換える前の全文)

使うのは実在しない架空の運送会社の求人票だ。社員18名、4トン車が中心の地場配送という設定にした。特定の会社の求人を引いたものではなく、よく見る書き方を1枚にまとめている。

【架空の求人票・書き換える前】

職種トラックドライバー(正社員) 仕事内容一般貨物の配送業務全般。積み込み、配送、その他付随業務をお願いします。未経験の方も先輩が丁寧に指導しますので、安心してご応募ください。アットホームな職場です。 賃金月給 200,000円 〜 450,000円
※経験・能力を考慮のうえ決定します ※各種手当を含む 定額的に支払われる手当- 通勤手当実費支給 就業時間6:30 〜 15:30(時間外あり) 休日日曜、その他(週休二日制) 必要な免許中型自動車免許(8t限定可)

この求人票に嘘は一つも書かれていない。法令違反もない。それでも同じ画面に並んだときには何も伝わらない。理由は3か所に集中している。

賃金欄の直し方:25万円の幅を、経験者向けと未経験者向けの2本に分ける

「月給200,000円〜450,000円」。この25万円の幅は、たいてい未経験の人の額と、大型を10年やってきた人の額を1枚に混ぜたことで生まれる。混ぜた瞬間、どちらの応募者にも自分の額が分からなくなる。

読む側は、上限が誰の額か分からないとき下限で計算する。45万円という表示は、45万円を出せる会社だという事実を一度も伝えないまま、20万円の求人として並べられてしまう。「各種手当を含む」も同じで、固定残業がいくら入っているか分からないから、読む側は最悪の想定で見積もる。

直し方は、幅を狭めることではなく1本の求人を対象別に2本へ分けることだ。

【賃金欄・書き換えた後】

A:中型・地場配送/経験3年以上月給 265,000円 〜 295,000円
・基本給 200,000円〜230,000円(経験年数と保有免許で決定)
・無事故手当 5,000円
・固定残業手当 60,000円(時間外30時間分。30時間を超えた分は別途支給します)
※2025年度に入社した3名は、265,000円・270,000円・280,000円で決まりました B:未経験・準中型から/中型免許の取得費用は会社負担月給 230,000円 〜 240,000円
・基本給 195,000円〜205,000円
・固定残業手当 35,000円(時間外20時間分。20時間を超えた分は別途支給します)
※中型免許を取得した時点でAの条件に移ります(早い方で入社10か月)

読む側にはこう見える。まず、自分がAとBのどちらの枠かが1行で分かる。次に、総額ではなく内訳で他社と比べられる。基本給が20万円なら、賞与も退職金も残業の時間単価もそこから計算できるからだ。そして最後の「入社した3名は265,000円・270,000円・280,000円」が効く。実際に決まった額があると、上限が飾りではない証拠になる。

仕事内容欄の直し方:時刻を6つ入れて1日の流れとして書き出す

「一般貨物の配送業務全般。積み込み、配送、その他付随業務」。応募者がいちばん身構えるのは「その他付随業務」の6文字だ。何が来るか分からない欄として読まれる。何時に始まって何時に終わるかも、1行も書かれていない。

1日の流れを足すこと自体は応募が来ない求人票と来る求人票の違いで書いた。ここで見せたいのは、その流れをどこまで細かく書くかという水準だ。

【仕事内容欄・書き換えた後】

1日の流れ(中型・地場配送の場合) 6:30 出社・点呼(アルコールチェックと体調の確認。5分程度)
7:00 積込(4tパワーゲート車。パレット8枚。手積みは月に2〜3日あります)
8:00 出発(福岡市東区から筑紫野の固定ルート。1日12〜15件。うち4〜5件は台車で建物の中まで運びます)
15:30 帰庫・洗車
16:00 日報(タブレットに入力。15分程度)
16:30 退社 残業月20〜30時間。12月だけは40時間になる月があります。 「その他付随業務」の中身月末の棚卸し(半日・年12回)、車両整備の立ち会い(年2回)。これ以外にお願いすることはありません。 最初の30日先輩の助手席で同乗(2週間)→ 同じルートを1人で(2週間・無線でいつでも聞けます) 一緒に働く人ドライバー14名(26歳〜58歳)、配車2名、事務2名

読む側にはこう見える。「その他付随業務」が名前と回数を持った瞬間、身構える対象がなくなる。棚卸しが半日で年12回なら、受け入れられるかを判断できる。手積みが月2〜3日なら、体力の見積もりができる。12月だけ40時間という一行は読んだ人の一部を離脱させるが、その人は書かなかった場合に入社してから辞める人でもある。

前の節の読み方も、ここで効いてくる。「日報はタブレットに入力」は紙をやめている会社だという申告になり、「ドライバー14名・配車2名・事務2名」は14台を間接4名でさばいているという申告になる。

手当欄の直し方:空欄を、手当の名前と金額と支給条件の3行で埋める

3つ目は手当欄だ。書き換える前の求人票では、ここが「-」になっていた。福岡のドライバー求人88件を数えたとき、この欄が空欄だった求人は36件、全体の4割。空欄は珍しくない。珍しくないからこそ、埋めるだけで前に出られる。

【手当欄・書き換えた後】

定額的に支払われる手当 ・無事故手当 月5,000円(当月に人身事故・物損事故がない場合)
・資格手当 中型5,000円/大型10,000円/フォークリフト3,000円(重複して支給します) 通勤手当月上限20,000円(実費支給)

読む側にはこう見える。空欄は「手当のない会社」として読まれる。実際には無事故手当を払っていても、書いていなければ応募の判断材料に一度も入らない。金額と条件がそろって初めて、読む側は総額の中身を計算できる。同じ88件で、通勤手当を金額まで書いていた求人は72件あった。手当欄は空欄が4割なのに、通勤手当は8割が金額まで書いている。同じ会社が書いているのに、この差が出る。

書くための材料は、すでに社内にある。先月の給与明細を1人分開けば、実際に払っている手当が名前と金額つきで並んでいる。

3欄を直した求人票の全文

3か所を通しで並べる。給与の水準は上げていない。新しい手当も作っていない。書き足したのは、すでに社内にあった事実だけだ。

欄書き換える前書き換えた後
賃金月給200,000円〜450,000円(各種手当を含む)A:265,000〜295,000円(内訳3行+去年の実績3名)/B:230,000〜240,000円(内訳2行)
仕事内容一般貨物の配送業務全般。その他付随業務。アットホームな職場です時刻6つの1日の流れ、付随業務の名前と回数、最初の30日、一緒に働く18名の内訳
手当-(空欄)/通勤手当は実費支給無事故手当5,000円(条件つき)・資格手当3種/通勤手当は月上限20,000円

前の求人票を読んだ人に残るのは「20万円かもしれない配送の仕事」という一行だけだ。後の求人票を読んだ人には、朝6時半に出社して夕方4時半に帰り、月末に半日の棚卸しがあり、26歳から58歳までの14人と働く仕事、という像が残る。同じ会社の、同じ給与の求人である。

固定残業代を書くなら、3つをそろえて明示する

賃金欄を直すとき、一つだけ外せない要求がある。固定残業代を賃金に含める場合の書き方だ。厚生労働省は、若者雇用促進法に基づく指針を踏まえ、募集要項や求人票に次の3つをすべて明示するよう求めている。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
  3. 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

同じ資料には記載例も載っている。「基本給(××円)(②の手当を除く額)」「□□手当(時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)」「○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」の3行だ。この記事のAの枠が3行なのは、この形に合わせたからである。

指針の対象は青少年が応募する可能性のある募集や求人だが、どの求人でも同じにしておいたほうが安全だ。手当の名称にかかわらず、一定時間分の割増賃金として定額で払っているものは固定残業代として扱われる。

求人票を直しても応募が増えないのは、どういう会社か

正直に書いておく。3か所を直しても、応募が増えない会社はある。分かれ目は3つだ。

1つ目は、そもそも人が来ていない場合。求人票が拾えるのは、見ていたのに応募まで進まなかった人だけだ。母集団が薄い職種は書き方をどれだけ直しても人数は増えない。その場合に効くのは入口ではなく、運転以外の仕事を剥がして1人あたりの負担を組み替えるほうになる(ドライバーの手から運転以外の仕事を剥がす)。

2つ目は、盛った場合。残業を実際より少なく書けば応募は一時的に増えるが、その応募は入社後のずれで戻ってくる。効果を応募数だけで測っていると、気づくのが1年遅れる。

3つ目が、実は一番多い。書く材料が社内から出てこない場合だ。去年入社した人がいくらで決まったか、手積みが年に何日あったか、棚卸しに何時間かかっているか。これらが台帳ではなく特定の誰かの頭の中にあると、求人票には書けない。書けないから抽象的な言葉で埋めることになる。「アットホームな職場です」は、書く人が手を抜いた結果ではなく数字が出てこないときに残る言葉だ。

逆に言えば、うまくいく会社の共通点もここにある。3名の決定額をその場で出せる会社は、求人票も直せる。求人票を直す作業は、そのまま自社の数字が出てくるかどうかの点検になっている。

今日30分でやること:求人票を1枚、机に出す

  1. いま出している求人票を1枚出して、賃金欄の下限と上限の差を見る。10万円以上開いていたら、経験者向けと未経験者向けの2本に分ける
  2. 仕事内容欄に時刻を6つ入れる(出社・積込・出発・帰庫・日報・退社)。「その他付随業務」の中身を名前と回数で書き出す
  3. 先月の給与明細を1人分開く。毎月固定で出ている手当を、名前・金額・支給条件の3点で書き写す
  4. 直した文面をいま働いているドライバー1人に読ませて「これ、うちのことに読める?」と聞く。ずれがあれば、そこが盛っている場所だ

4つとも、新しい費用は発生しない。使うのは求人票1枚と給与明細1枚、それに社内の誰か1人の15分だけだ。

よくある質問

Q. 賃金の幅を狭くすると、いい人を取り逃がしませんか?
A. 狭くするのではなく、幅の広い1本を対象別の2本に分けてください。月給20万円から45万円という25万円幅の求人は、未経験の人にも大型10年の人にも自分の額が分かりません。読む側は、上限が誰の額か分からないときは下限で計算します。つまり45万円の表示は、45万円を出せる会社であることを一度も伝えないまま、20万円の求人として比べられてしまいます。経験者向けと未経験者向けに分ければ、どちらの人も自分の額を1行で見つけられます。求人票を2本出すこと自体に追加の費用はかかりません。
Q. 残業や繁忙期のことまで書いたら、余計に応募が来なくなりませんか?
A. 書けば一部の人は離脱します。ただ、その人は書かなかった場合には入社してから辞める人でもあります。早期の離職は仕事内容のずれから起きることが多く、そのずれは入口で作られます。もう一つ、書かなければ伝わらないという前提そのものが正しくありません。応募者は空欄からも読みます。固定残業が40時間分と書いてあれば毎月それくらい働く前提だと読み、繁忙期に書類の仕分けを手伝ってもらうと書いてあれば紙がまだ回っている会社だと読む。書かない選択は、悪い印象を消すのではなく、読む側の想像に判断を委ねる選択になります。
Q. 3つの欄を直したら、どれくらいで応募は増えますか?
A. 増える保証はありません。この直し方が効くのは、求人票までは見ていたのに応募まで進まなかった人を拾い直す場合だけです。そもそも母集団が薄い職種は、書き方をどれだけ直しても人数は増えません。効果を測るなら、応募数ではなく「求人票を見た人のうち何人が電話をかけてきたか」を直す前と後で比べてください。ハローワークの求人であれば、紹介件数の推移が窓口で確認できます。3か月動かなければ、入口ではなく仕事の組み替えのほうを疑う番になります。

この記事の立場

物流の会社で主に人事の側にいましたが、採用担当ではないため、面接官として応募者を選んだ経験はありません。本文の「読む側にはこう見える」は、自分が転職しようとしたときに応募者として求人票を読んでいた読み方をもとにしています。残業時間と休日日数を先に見たこと、固定残業の時間数を会社の申告として読んだこと、事務や管理の人数から仕事の複雑さを判断したことは、いずれもそのときの実際の見方です。

書き換えに使った求人票は架空です。実在の会社の求人を引いたものではなく、よく見かける書き方を1枚にまとめました。金額は、月平均の所定労働時間を173時間として、固定残業手当がその時間数の割増賃金を上回るように置いた計算例です。福岡のドライバー求人88件の数字は、ハローワークインターネットサービスで公開されている求人票の記載を2026年8月15日に取得して数えたもので、県内全体の代表性は保証されません。本記事は求人票の作成代行や個別の助言を行うものではありません。

上の例は月平均の所定労働時間を173時間として、固定残業手当がその時間数の割増賃金を上回るように置いた数字です。自社の所定労働時間で計算し直す必要があります。手当が実際の時間数に足りているかの確認は、社会保険労務士にご相談ください。

固定残業代の有効性や、自社の手当がこれに当たるかの判断は、賃金の定め方と実態によって変わります。個別の判断は社会保険労務士、または所轄の労働基準監督署・都道府県労働局にご確認ください。本記事は一般的な制度の説明です。

出典(国の資料と、求人票の実地調査)

※求人の掲載内容は日々入れ替わるため、同じ検索条件でも時期によって数字は動きます。(取得・確認日:2026-08-15/制度の確認日:2026-08-17)

3か所を直すのに要るのは、求人票1枚と給与明細1枚と30分だけだ。ただし、そのうち一つだけは社内の準備が要る。去年入社した3名が、それぞれいくらで決まったか。その額を、いますぐ出せるだろうか。

|著者:りゅうた(物流のプライム上場を含む上場企業2社で10年以上、主に人事・労務・総務。福岡で中小企業の業務改革を研究中。)
現場の話の続きは、noteでも書いています → りゅうた@中小企業の業務改革